すでに400以上の団体が相互運用性の実現に採用したFHIR

2番目のセッションには、ヴァンダービルド大学医学部 生物医学情報学 非常勤講師で、インターシステムズコーポレーション シニアクリニカルアドバイザー 医師であるラッセル・レフトウィッチ氏が登場。「相互運用性の実現への革新的なアプローチ:HL7 FHIR の可能性」と題した講演を行った。

ヴァンダービルド大学医学部 生物医学情報学 非常勤講師 インターシステムズコーポレーション シニアクリニカルアドバイザー 医師 ラッセル・レフトウィッチ氏

ヴァンダービルド大学医学部 生物医学情報学 非常勤講師 インターシステムズコーポレーション シニアクリニカルアドバイザー 医師 ラッセル・レフトウィッチ氏

1980年代には、米国の平均的な病院は、2つのシステムが利用される程度だった。しかし2010年には、80以上のシステムが利用されている。相互運用性のニーズは1980年代に出現し、米国の標準化団体であるHealth Level Seven(HL7社)が設立され、2つのシステムの相互運用性を確保する標準規格として、「HL7」が策定された。元々1つのシステムを他のシステムと接続するための仕組みである「HL7」を、現在では、複数のシステムの連携に使っているが、元来はこうした目的のために作られた標準ではない。

またシステムの数だけでなく、データ量も増え続けている。医療上で意思決定をするために必要なファクトは、1980年代に10種程度だった。2018年には1つの意思決定のために700種のファクトがあるという。さらに2020年には1,000種になると言われている。一方、人間が頭で考えて意思決定できるファクトの数は5種前後でしかない。

レフトウィッチ氏は「700種のファクトから意思決定をくだすためには、コンピュータによる支援は不可欠です。膨大なデータ量への対応と、複数システムの連携での相互運用性という課題が上がる中で登場したのが、新しい標準仕様のFHIR(Fast Health Interoperability Resources)です。FHIRはリソースとして提供されており、汎用的なWeb技術を利用できるので、素早く開発できるのが利点です。HL7のサーベイでは、400以上の団体がすでにFHIRを利用していると答えています」と語る。

「FHIRは“草案段階なのか”と聞かれることがありますが、すでに使える標準です」とレフトウィッチ氏は断言する。例えばスマートフォンを連携して医療データを活用できるようにした事例、複数の電子カルテを連携した医療の意思決定支援の事例、外部の医療ライブラリへのアクセスの事例、予約スケジュール管理の事例などがある。

レフトウィッチ氏は「FHIRにはすでに数多くの事例がありますが、すべての仕組みを置き換えるものではありません。いくつかの標準仕様を連携するハイブリッドの標準仕様の世界になります。インターシステムズのプラットフォームでは、FHIRをはじめとした複数の標準に対応したデータ連携機能を提供しています」と話している。

  • レフトウィッチ氏によるユニークなプレゼンテーション資料

    レフトウィッチ氏によるユニークなプレゼンテーション資料

世界最先端の技術による医療アプリをInterSystemsで実現

最後のセッションには、インターシステムズジャパン 日本統括責任者の植松裕史氏、およびテクニカルコンサルティング部 上級コンサルタントの堀田稔氏が登場。「Bring Together The Information That Matters --AI・IoT時代におけるすべての医療健康情報利用にあたっての課題とソリューションの考察」と題した講演を行った。

インターシステムズジャパン 日本統括責任者 植松裕史氏

インターシステムズジャパン 日本統括責任者 植松裕史氏

植松氏は「AIやIoTなど新しい技術が次々と登場するが、こうした“言葉”に惑わされることなく、その時代に何が重要なのかを常に意識しておくことが必要です。“イノベーション”という言葉も同じです。本は紙から電子書籍に、映画は映画館からネット配信へ、タクシーはUberへと、ビジネスモデルが大きく変化しています」と話す。

医療ITも、医事会計システムの登場や臨床システムの登場など、いくつかのイノベーションを経験している。こうしたイノベーションはゆっくりと起こるわけではなく、ある時点で急速に変化する。現在はクラウドやビッグデータなどを活用する「ソサエティ4.0」から、AIやIoTなどの最先端技術を活用する「ソサエティ5.0」へと進化している。

ソサエティ5.0により、医療IT環境も大きく変化する。あらゆる医療情報を連携し、共有できるインフラが必要であり、ITを活用した「患者情報 360°」の実現が求められる。患者情報360°の実現には、(1)個人・院内・地域に広がる患者情報を共有できる医療ITアーキテクチャ、(2)記述情報をコンピュータ処理に適した形に変換する自然言語解析技術の2つの要素が必要になる。

インターシステムズジャパン テクニカルコンサルティング部 上級コンサルタント 堀田稔氏

インターシステムズジャパン テクニカルコンサルティング部 上級コンサルタント 堀田稔氏

インターシステムズでは、自然言語処理技術として「InterSystems NLP」を提供している。堀田氏は「従来の自然言語解析技術は、オントロジーや辞書を使ってトップダウンに単語の集合体を抽出し、それを解析するのが一般的です。InterSystems NLPは、辞書なしで文書を解析し、文の構造そのものから意味を持つ一連の文字列であるエンティティを抽出するボトムアップのアプローチで、発見的な探索を可能にするとともに、辞書を常に最新の状態にする労力からも解放されます」と話す。

  • InterSystems NLPの説明
  • InterSystems NLPによる自然言語処理 概念図

最後に植松氏は「自然言語解析や相互運用性、情報共有など、医療に必要なIT技術を1つのプラットフォーム上で活用できるのがInterSystems HealthShareです。2018年10月には、医療アプリ開発に特化したデータプラットフォームであるInterSystems IRIS for Healthも発表しました。これらの製品で、世界最先端の技術を組み込んだ医療アプリを実現できます」と話し、本セミナーを締めくくった。

[PR]提供:インターシステムズジャパン