「いいちこ棒」はどのようにして生まれたのか?

イベントが大いに盛り上がるなか、今回は来場していたニフティの「いいちこ棒」の企画担当、金岡氏に詳しいお話を伺うことができたので、その様子をお伝えしよう。

三和酒類とニフティによって開発され、さまざまな活用方法が見込まれる「いいちこ棒」。このようなIoTデバイスが開発されるに至った経緯は、どのようなものだったのだろうか。

ニフティ株式会社 IoT推進室 IoTビジネス企画部 金岡 亮氏

── IoTアンケートシステム「いいちこ棒」開発のきっかけについて教えてください

三和酒類様、カルカル運営チームにご相談いただいたことがきっかけです。カルカルでのイベントを多数サポートしてきた三和酒類様は、「イベント中のアンケートや投票のオペレーションを効率化し、エンターテインメント性を持たせたい」と考えられていました。

従来、イベント中に行っていた「アンケート投票」や「三択クイズ」などの集計は、お客様に用紙を配布し、それを人力で回収する形で行われていました。それによってイベントの進行がたびたび中断され、せっかくのイベントの流れを止めてしまっていたそうです。

そこでこの問題を解決するため、三和酒類様、カルカル運営チームは私どもIoTデザインセンターを交えて企画検討を進め、このアイデアを実現するデバイスを開発しました。

── ニフティ IoTデザインセンターはどのような業務を行っているのでしょうか

IoTデザインセンターは、私のようにお客様へのヒアリング、ビジネス提案を行う「企画チーム」と、ネットワーク技術やシステム開発に精通したエンジニアが所属する「ニフティIoTラボチーム」で構成されています。ニフティIoTラボチームでは、お客様へのソリューション提案のほか、IoTに関する試作や調査にも取り組んでいます。

今回の「いいちこ棒」では、企画チームが三和酒類様や東京カルチャーカルチャースタッフへのヒアリングを行い、ニフティIoTラボチームがヒアリング内容に基づいた要件への落とし込み・プロトタイプ開発・実装を行いました。

── 「いいちこ棒」の技術的な特徴はどのような点にあるのでしょうか?

「ZigBee」によるメッシュネットワークを構築することによって、120台のデバイスの同時接続を実現しているのが特徴です。また、デバイスから送信されたデータを集約する中央受信機(Raspberry pi)と、集計結果を表示するUIのミドルウェアには、ニフティクラウドMQTTを利用し、サーバーレスアーキテクチャーを実現しています。ニフティIoTラボチームの面々も、「技術的にかなりチャレンジングなことができた」と自負しています。

── 「いいちこ棒」の開発で、苦労した点などあれば教えてください

今回の「いいちこ棒」は、120本のデバイスをタイムラグなく同時通信させる必要がありました。この通信の実現に大変苦労し、試行錯誤を繰り返しました。例えば、無線LANでネットワークを構築しようとすると、大規模なアクセスポイントを設置する必要があるうえ、消費電力も大変大きくなります。さらには通信が一か所に集中し、輻輳する懸念もありました。また、IoTシステムでよく用いられる通信方式はBluetoothですが、イベント会場などの広い空間では通信可能な距離が短いのが難点となりました。

そこで弊社が採用した通信規格が、規格上65,536ノードを同時に接続でき、かつ低消費電力という、無線子機に最適なZigBeeです。

しかしZigBeeでの実装も、単純に120ノードを接続しても上手く通信ができないケースがあるなど、一筋縄ではいかないことが多々ありました。最終的には、デバイスが属するネットワークを小規模(※今回は40台ずつ3チャンネル)に分割し、機器間でメッシュネットワークを構築することで、120本のデバイスでの同時通信を実現しました。