ノードの増設によって本当にパフォーマンスは向上するのか?ブロードバンドタワーの実環境で徹底検証
今回の性能検証のポイントは、「ノードの増設によって、どれだけスループット性能を伸ばせるか」をテストすることにある。矢澤氏は、今回の検証の狙いを説明して、次のように語っている。
「従来のストレージ製品ですと、ノード数を増やしても期待したほど性能が出なかったという話をよく聞きますが、RINGの場合ノードの増設とともに、スループットもリニアに拡張しますので、ROI向上の面でも貢献できると考えています。この点を、国内で唯一Scalityのトレーニング済みエンジニアがいるブロードバンドタワー様に、中立的な立場からテストしてもらうのが今回の検証の狙いです」。
データアクセスのプロトコルとしては、敢えてNFSを使用。専用の他社アプライアンス製品と比較しながら、Scality RINGがファイルシステムとしてどれだけ使えるのかを検証している。「どんな製品にも必ず特長や癖があり、それによって最適な使い方も変わってきます。それらすべてを把握するのがわれわれの仕事ですので、RINGについてもそこはシビアに検証しています」とは、池田氏。
今回の検証の前提条件を確認するため、Scality RINGのアーキテクチャについて簡単に触れておこう。RINGは、データの格納先となる「RINGストレージノード」(HDDを複数本搭載した物理サーバ6台以上から構成)、アプリケーションとのインターフェースとして、データの格納/取り出しを行う「RINGコネクタノード」(物理または仮想サーバで構成)、統合管理を行う「RINGスーパーバイザー」(物理または仮想サーバ)という、三つのレイヤーから構成される。
今回の検証では、「RINGコネクタノード」の増設によるスループットの拡張性を検証している。「Scality RINGの場合、RINGストレージノードにデータを置き、コネクタの所でクライアントからの処理を受けて、データを分散して書くという仕組みですが、最初にボトルネックになってくるのはコネクタの部分です。そこで今回の検証では、3台のクライアントから各コネクタに対し均等に負荷をかけ、最大9台のコネクタノードの追加によって、どれだけスループットが伸びるのかを計測しました」(池田氏)。
コネクタの追加によってスループットがリニアに向上
それでは、今回の検証結果を順に見てゆこう。「具体的な数値に関しては、数字が独り歩きするのが嫌なので、ここで公開することは差し控えたいのですが、ファイル専用の他社アプライアンス製品と比較しても決して見劣りしない数字が出ています」(池田氏)。
まず、表1は1MBのデータを連続してI/Oした「ラージシーケンシャル」のReadとWriteの結果を示している。横軸はコネクタの台数、縦軸はコネクタ1台分のMB/s値を基準にした相対的なネットワーク転送速度を示しており、例えば縦軸「2」は、コネクタ1台分のMB/sの2倍の数値が出ていることを表す。
Read/Writeともに、コネクタノードの追加によってリニアにスループットが向上していることが確認できる。「ラージシーケンシャルのRead/Writeに関しては、Scality社のメッセージ通りに動き、今回の構成のままでも、コネクタの追加によって、上限なく伸ばすことができます。個々のサイズが大きいデータを読み書きする用途でSDSの導入をご検討のお客様に対しては、既にファイル系のプロトコルをご利用の環境であってもRINGは十分に性能を発揮することができますので、弊社としても自信をもって導入をお奨めすることができますね」(池田氏)。
表2は、4KBほどの小さなデータをランダムにI/Oした「スモールランダム」のReadの結果である。横軸はコネクタの台数、縦軸はコネクタ1台分のIOPSの数値を基準として相対的なIOPSの高さを示している。
一般的には、スモールランダムはSDSが苦手としている分野と言われているが、RINGについては7台目までは良好にスケールすることが確認できる。「8台目以降、IOPS値が伸びておりませんが、これは今回の構成のもとでのコネクタの性能限界―具体的に言えば、コネクタに積んでいたSSDの本数―に起因します。今回のスモールランダムの検証で特に興味深かったのは、小さいデータであれば、HDDに書き込むのではなく、SSDに配置するという構成が可能だった点です。このRINGの特性をうまく利用すれば、スモールランダムでも十分にパフォーマンスを出すことができます」(池田氏)。
従来のストレージ製品の場合、格納するデータ量が多くなったり、ネットワークスループットが広帯域になると挙動が不安定になるケースも多いと聞くが、Scality RINGについては、この点も問題ないという。
「実際に97%までデータを入れたことはありますが、全くレスポンスが悪くなることなく格納できるという点は、既に確認済みです。今回は、RINGストレージノードがボトルネックになるケースは検証していませんが、ストレージノードを追加することによって、どれだけScality RINGのパフォーマンスが拡張するのかという点に関しても、今後検証結果を公開してゆく予定です」(池田氏)。
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