エンタープライズ向けストレージにおける最注目キーワード「ソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS)」。大容量や低コストといった側面にフォーカスが当たることで、いつしか「SDSは遅い」というイメージをもたれてはいないだろうか。そこで本稿では、ペタバイト級のSDS「Scality RING」を開発・提供するスキャリティ・ジャパンの矢澤祐司氏と、同社国内初の保守サポートパートナーであるブロードバンドタワーの池田企氏へインタビューを実施。ブロードバンドタワーの実環境を利用した性能検証の結果を交えながら、SDSならではの使いどころを語ってもらった。
ハードウェアを選ばないSDS「Scality RING」ファイル共有プロトコルにもネイティブで対応
2000年より独立系事業者としてインターネットデータセンター事業を展開するブロードバンドタワーは、2006年にEMC社製スケールアウトNAS「EMC Isilon」の販売開始以来、EMC社製品やNetApp社製品などマルチベンダーのエンタープライズ向けストレージ販売も手掛けている。2014年度にはEMCジャパンより「EMC Business Partner Award 2014特別部門 保守サポート賞」を授与されるなど、多数のストレージ専門エンジニアと充実したサポート体制に基づく保守サポート力は、ストレージ業界でも高い評価を得ている。
「特定のベンダーに縛られることなく、お客様の用途に最適な製品を最適な構成でご提案し、ベンダー以上に手厚い技術サポートを提供するのが、弊社のポリシーです」と、ブロードバンドタワーのストレージ保守部門を統括する池田企氏は語る。
そんな同社が、2015年3月より国内初のディストリビューションパートナーとして販売を開始したのが、米国の新興ストレージベンダーScality社の提供するSDS製品「Scality RING」だ。
Scality RINGは、汎用的なLinux OSが組み込まれた複数のx86サーバ上でアプリケーションとして動作することによって、ペタバイト規模の分散ストレージシステムを実現する、純粋なソフトウェア製品。既に90社以上もの大規模本番環境への導入実績をもち、ユーザー企業の中には日本の大手通信キャリア2社やニフティの他、YouTubeに次ぐ世界第2位の動画共有・配信サイトDailymotion、650億個ものオブジェクトを格納する米国ケーブルテレビ最大手のComcast、HPC/分散コンピューティングシステムのストレージとしてRINGを採用し、500PBもの運用実績を誇るロスアラモス国立研究所など、適用範囲も幅広い。
こうした幅広い用途を可能にするScality RING最大の特長は、マルチプロトコルに対応する柔軟性だ。
Scality社の日本法人であるスキャリティ・ジャパンのセールスエンジニア 矢澤祐司氏は、次のように解説する。「Scality RINGは、オブジェクトストレージのアーキテクチャをベースにしていますが、REST APIを用いたオブジェクトアクセスだけでなく、NFSやSMBなど業界標準のファイル共有プロトコルにもネイティブで対応しております。実際、汎用的なx86サーバで大規模な分散ストレージを構築するSDSには魅力を感じつつも、オブジェクトではなく、従来通りファイルとして使いたいお客様も多いのではないでしょうか。RINGであれば、既存のアプリケーションに変更を加えることなく導入が可能ですし、アプリケーションの統合や追加も容易です」。
今回スキャリティ・ジャパンとブロードバンドタワーでは、ブロードバンドタワー都内の拠点である大手町データセンターに構築した専用の検証環境を用いて、Scality RINGの性能検証を実施している。本稿では、この共同検証の結果をレポートすることにより、RINGならではの使いどころを明らかにしよう。
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