カプコンがニンテンドー3DS専用ゲームとして提供している「めがみめぐり」というソフトをご存知だろうか? このゲーム、実はSuicaなどの交通系ICカードの乗車履歴によってゲーム内コンテンツをもらえるという特徴を持つ。この交通系IC連動で協力したジェイアール東日本企画(jeki) デジタル・ソリューション局 ソリューション第二部 東山 敦史氏と同部 工藤 勇氏に話を聞いた。
めがみめぐりを端的に説明すると「桃鉄」がわかりやすい。プレイヤーは女神「ツクモ」を成長させるために全国9000駅以上の駅を周遊する。交通系ICカード連動は、ニンテンドー3DSのNFCリーダー/ライターでプレイヤーが所有するICカードを読み取らせることで、購買履歴や乗車履歴からゲーム内キャラクターとの会話やアイテム入手が可能になる。交通系ICカードは、Suicaのみならず、PASMOやTOICA、ICOCA、SUGOCAなど全国10種類に対応している。
この連動にあたって協力したのがjekiだ。「スマホにSuicaをかざすだけ - jekiが作った、社員と会社の双方に優しい交通費精算ソリューション」でも解説した交通系ICカードの利用履歴を活用するマーケティングプラットフォーム「SF-UNITY」を活用してデータ提供が行われるため、正確な購買、乗車履歴が取得できる。
またこのプラットフォームのメリットは、各社それぞれに使用許諾を取る必要がある交通系ICカードのデータ活用を、SF-UNITYを介すことでjekiとの折衝のみで利用できる点だ。jeki自身が責任を持って案件の判断を取る必要があるものの、これらのデータを活用したマーケティングを検討している企業からすれば、全国の交通系ICカード利用者にリーチできる可能性が生まれる点は大きいだろう。ちなみにゲーム内の駅名データもjekiが提供しており「最寄り駅の名前がない/間違っている」といったことがない。また、9000駅が登場するという点でも、より親しみを持って楽しめるゲームに仕上がっていると言えよう。
O2O送客の可能性としての「交通系ICカード」
「これまでもSuicaなどのICカードの履歴は駅ビルをはじめとする商業施設のプロモーションに活用されていましたが、その多くは施設設置型。今回は固定されたデバイスから離れ、3DSという多く普及している端末に広がった点が大きいです」
こう話すのは東山氏。ゲームはダウンロードが無料で一部アイテム課金がある提供モデルで、2016年12月8日の提供開始から1月末までで40万ダウンロードを達成している。キャラクター設定画からわかるように、メインターゲット層は20代、30代の男性で、おおむね目標通りの推移だという。
従来からO2Oマーケティングでは位置情報の取得にGPSやBluetooth LowEnergyといったビーコンが用いられているが、東山氏らはSuicaなどの履歴データの活用を目指している。
「もちろん自分たちでもGPSなどの位置情報データを組み合わせたものもやっています。ただ、それらのデータを掛け合わせられるにせよ、『電車に乗ってかざす』というピンポイントなデータが生み出す価値、情報は大きいんです。
もちろん、購買データの深掘りはユーザーさんの同意を得なければなりませんし、『個人情報』に特定されないマスキングデータとして活用できるものを、同意を得る形で使います。将来的には、私たちが持っているデータをAPIとして提供して、使いやすい形で提供できればと思っています」(東山氏)
「O2O」という文脈では、すでにゲーム内で「アトレ秋葉原」「鉄道博物館」「西日本鉄道」らとタイアップを実施。それぞれの場所で決済や乗降した履歴をカードに残し、3DSにタッチすることで限定アイテムをもらえるキャンペーンを行った。テストマーケティングのため、それぞれ費用が発生しない形で実施したが、普段利用していない近隣住民の誘客として合意に至ったという(タイアップ一覧ページ)。
また3月1日~15日の期間限定で、JR東日本管内で展開する駅コンビニ「NewDays」の各店舗で買い物すると、買物金額と同等の「おさい銭」がもらえる。おさい銭はゲーム内の移動コストの対価として支払う通貨で、買い物と同額のおさい銭はプレイヤーにとって少なくない”おこづかい”になるだろう。