交通費精算と言えば社会人にとって悩みのタネだろう。SuicaやPASMOの行動履歴を印字したり、過去のスケジュールを確認して精算システムに入力したり……。この手間を省いてくれるサービスが、ジェイアール東日本企画の「transit manager(トランジット・マネージャー)」だ。
Suicaに代表される全国の交通系ICカードの利用実績から、交通費として申請するデータ”のみ”を簡単に抽出できるソリューションで、PCに設置したICカードリーダーやNFC搭載スマートフォンにカードをかざすだけでカードに記録されている情報を吸い上げてくれる。
将来的には専用の読取機の提供も想定しているこのシステムの何が”刺さる”のか。ジェイアール東日本企画 デジタル・ソリューション局 ソリューション第二部 部長代理の八城康彦氏と同部の東山敦史氏に話を聞いた。
業務/私用データの切り分けが一瞬で
このソリューションでは、PCに接続したICカード読み取り機「PaSoRi」で読み取れるほか、Android端末での読み取りにも対応する。
「Androidスマートフォンを社員に貸与している会社であれば、スマートフォン一つで履歴管理ができますし、もっと簡単に管理する手法としてPaSoRi、そして販社となるソフトバンクさんが富士通のARROWS Tabletを用意しています。部署に一台用意しておけば、タブレットですから社内のどこでも履歴管理が可能になります。ほかに出退勤ソリューションと組み合わせ、日常の所作の中に履歴管理を組み込むという手も考えられます。Suicaを社員証として利用するケースがありますから、出退勤で『ピッ』とタッチすると同時に履歴も取得することも可能です」(八城氏)
実際に、その場でトランジット・マネージャーを試したが、(当然だが)スマートフォンにSuicaをかざすだけで履歴がインポートされる。
このアプリの良いところは、業務と私用データの切り分けが非常に簡単で、決済データのスイッチボタンをタップするだけ。訪問先を入力する必要がある会社であれば、メモ機能で用件を入力できる。
また、複数のカード読み込みにも対応する上に申請済み/未申請の重複を自動で判定してくれるため、従業員が頭を悩ませる必要がない。それに加えて、Androidアプリ「モバイルSuica」のユーザーであれば、同じ端末にトランジット・マネージャーをインストールすることでデータの読み込みがワンタップで可能になるため、業務効率化に繋がる。
読み取りカードを複数設定できるだけでなく、登録カードがわかりやすいように事業者別のカードフェイスが用意されている。まさかのモバイルSuicaも |
スイッチボタンをタップするだけで業務か私用かを選択できる。また「物販データは私用」といったデフォルト設定も可能だ。パソコンでもデータを管理できる |
正確なデータが肝に
ジェイアール東日本企画と言えば東日本旅客鉄道(JR東日本)の交通広告を中心とした広告代理店のイメージが強い。ただ、これに関連したサービス設計全般を担っており、交通系ICカードの利用履歴を活用するマーケティングプラットフォームの「SF-UNITY」なども手がけている。その派生サービスとも言えるのがトランジット・マネージャーだ。
「交通費を精算される時、券売機から出てくる交通明細を元に手入力したり、あるいはその明細書そのものを提出する方が多いと思います。でも、多くの方がSuicaで買い物をされたり、公私関係なく1枚のSuicaで移動をされているはずです。それで経理に『明細を提出してください』と言われても、私的な行動、買い物が筒抜けになってしまうため、経費精算を嫌がる方もいる。そうした方々の悩みを解決できる手段としてトランジット・マネージャーが生まれました」(八城氏)
八城氏によると、すでに同様のICカード読み取りによるサービスはあるという。そこで強みとなるのが「JR東日本グループの公式サービス」であることだ。正確な駅のデータが使用できるため、新駅開業や駅名変更といった更新情報を正確に取得できる。