KDDIは2月24日、小型の携帯電話基地局を搭載した「ドローン基地局」を3月以降に実証実験すると発表した。全国10カ所の保守拠点に配備するが、国内で初めての試みだという(関連記事 : ハウステンボス 富田CTOが「ドローンで配達サービスはあり得ない」と考える理由)。

同日、KDDIは東京・有明の「そなエリア」でイオンと共に災害訓練を行い、ドローン基地局をデモンストレーションした。なお、実際に配備するドローンとほぼ同じ構成、筐体を利用しているものの、無線基地局の免許申請などが必要なことから、電波の放射は行わなかった。

災害訓練ではヘリコプターも登場した

車載型基地局も登場、UQと共同で運用する想定で設営が行われた

ドローン基地局は、東日本大震災以降の大規模災害を教訓に検討されたもので、道路の断絶などから車載型基地局が到達できない場所でも携帯電話サービスの提供エリアを確保するために提供する。同社は衛星通信、あるいは光ファイバー接続で通信環境を提供する車載型基地局のほか、沿岸部の孤立地域の通信環境を提供する船舶型基地局をすでに用意している(関連記事 : KDDIが大阪のデータセンターに施した2つの「安全策」)。

ドローン基地局

いわゆる「陸海空」の対策が揃うことになる

ドローン基地局では、「4G LTE」と「Wi-Fi」による2系統のバックホール回線を検討している。LTEによる伝送路であれば最長で10km~20km、Wi-Fiであれば200m~300mのエリアを確保できる。

どちらも「ドローンが受信できる電波が届いているのであればそれで問題ないのでは」という疑問が生じるが、いわゆるルーラルエリア(地方の人口過疎地域)の多くは山間部で、「山の谷間、谷間が電波の影になりやすい。ドローンが上空で受信し、電波を吹き下ろすようにすることで、山間部に安定した電波環境を届けられる」(KDDI 電波部 マネージャー 遠藤 晃氏)とその存在意義は大いにあるようだ。

機体は、LTE回線による操作を可能にした「スマートドローン」の開発で協力、出資も行っているプロドローンのほか、コンシューマ向けで世界No.1シェアのDJIなどを含め、複数メーカーのものを検討している。現時点で検証しているドローンの連続飛行時間は30分。無線局やアンテナなど、基地局を構成する機材の重量(ペイロード)はおよそ3kgとなる。「連続飛行時間は短いものの、将来的により長い飛行時間を期待したい。もちろん運用上は、期待を複数機用意して、ローテーションして継続飛行するといった事も考えている」(遠藤氏)(関連記事 : 3キャリア随一の本気度? KDDIがセルラードローンの商用化を目指す)。

KDDI 電波部 マネージャー 遠藤 晃氏

基地局(中継局)設備。無線機のほか、Wi-Fi設備も搭載している

バックホール回線はLTEとWi-Fiを検討しているとしていたが、現実的にはLTEとみられる。すでに屋久島で検証を行っており、半径約1kmの範囲で通話可能であることも実証済みだという。VoLTEも動作確認が行われており、基本的には震災被害直後の急を要する救助要請のためのエリア確保に活用するようだ。

屋久島で1月より実証実験をスタートしている

ドローン基地局を操作するスタッフ

災害訓練では、同社の遠隔作業支援システム「VistaFinder MX Cloud」を活用して、ドローンのカメラ映像を遠隔監視に使うデモンストレーションが行われた。これをドローン基地局に併設することで、現場の被災状況を確認しつつ、通信エリアの提供も行う想定もあるという(関連記事 : KDDI、ARを取り入れた動画中継の遠隔作業支援システム)。

Vista Finderの中継映像(左)と撮影した機体(右)