1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災から22年を目前に控え、KDDIが大阪で災害時におけるBCPの取り組みと、2015年に竣工した「KDDI大阪第2ビル」の説明会を開催した。

記者説明会の冒頭、KDDI 理事で関西総支社長 松尾 恭志氏は第2ビルについて「災害対策の目的のために建設したビル」と説明。「西日本における運用の中心であるとともに、関東圏が大きな災害に見舞われることが万が一あった場合に備えて、全国の通信を司る第2拠点として機能する」(松尾氏)とその存在意義について語った。

第2ビルは2015年7月に竣工したばかりで、同社のデータセンター「TELEHOUSE OSAKA 2」も同ビルに設置しているほか、前述のネットワーク運用を行う「大阪テクニカルセンター」が用意されている。なお隣に併設されている旧ビルの「KDDI 大阪ビル」は今後も利用する予定だという。

KDDI 理事 関西総支社長 松尾 恭志氏

KDDI 大阪第2ビル(隣接ビルはKDDI 大阪ビル)

国内最大級の自家発電設備で通信とDCを保護

建物は地上20階、塔屋2階で高さが最高部で130m。京橋駅近くの大阪ビジネスパーク(OBP)に位置するが、この地区で唯一のヘリポートを備えており、万が一の場合には兵庫県伊丹市の伊丹駐屯地と連携することも検討されているそうだ。

地上約130mの高さに位置するヘリポート。松尾氏が説明を行っていたが、彼の後ろは落下防止柵やネットが用意されていない”奈落の底”。危険を顧みずに立ちながら真下を撮影する記者がいた

通信インフラの西の要として、データセンター事業者として、最新の防災設備を備えており、最大48時間の自家発電設備と4種類の免震構造によってインフラを守る。

自家発電設備は、東日本大震災の教訓として「津波によって低層階が浸水する可能性がある。かつては発電設備の重量の問題から、地下や地上階にしか設置できなかったが、この最新鋭の環境では3階に設置することが可能になった」(松尾氏)。阪神淡路大震災を経験している関西地区だが、現在は南海トラフ地震による津波被害の可能性が指摘されている。この津波対策を行うことで、万が一関西電力による送電が途絶えた場合でも、2日間はビル設備で電力を賄える。

設置された発電機は6000kVA(キロボルトアンペア)で国内最大級の発電量を誇る。1時間あたり2100リットルのジェット燃料を使用するが、最大10万5000リットルの備蓄が可能だそうだ。1分で発電機が起動し、送電経路切替も1分程度で切り替えられる。最大8機の設置スペースのうち、現在は3機が設置されており、今後データセンターの需要などにあわせて7機まで増強する予定。なお担当者によれば、1機のスペースを残す理由は「発電機の更新時期に差し掛かった場合、1機のみ新規導入して検証を行い、問題がなければ残りの発電機の入れ替えを行う」としていた。

ハイブリッド免震構造で耐える仕組みに

一方の免震構造では、「鉛プラグ挿入型階層ゴム」と「弾性すべり支承」「直動転がり支承」「オイルダンパー」を組み合わせたハイブリッドタイプを採用した。鉛プラグ挿入型階層ゴムは、大きな横揺れに対して粘りを発揮し、建物が受ける地震エネルギーを吸収する。弾性すべり支承は、支柱が最大90cm横に移動することでゴムで吸収しきれないエネルギーを受け流す(すべる)。なお、90cm移動することを前提にしているため、1階と繋がっている地下階段の下部が宙に浮いていた。

鉛プラグ挿入型階層ゴム

弾性すべり支承

90cmのすべりを想定しているため、地面部分とビル構造部分は分ける必要がある。階段が宙に浮いているだけでなく、通信ケーブルなども千切れないように余裕を持たせて設置されていた

直動転がり支承は、ビルが横倒しになることを避けるために用意されている免震構造で、十字型にレールが取り付けられており、上部構造が自在に動くようになることで、建物の偏心が制御できる。最後のオイルダンパーは、これまでに説明した免震構造では防ぎきれずに揺れ続ける建物の揺れを止めるための装置となる。

直動転がり支承

オイルダンパー

セキュリティの多重化と利便性を両立

その他ビル設備では、データセンターの「TELEHOUSE」が最新のセキュリティ保護を謳っていた。

データセンター「TELEHOUSE OSAKA 2」の入場ゲート。シンプルな外観となっている

同社データセンターはプライベートクラウドとしても利用できるため、ラックへのアクセス権がある。OSAKA 2では、これまで係員とのやり取りを必要としていたセキュリティゲートを、付与したセキュリティカードだけで通過可能にし、24時間アクセスができるようになっている。

もちろん、セキュリティを担保するために

  1. エントランスゲートのセキュリティカード入場

  2. 警備員詰所前で生体認証+セキュリティカードのW認証による2度目のゲート通過

3.サーバールーム前で1回1名の入場しかできない小部屋の設置

と3重のセキュリティチェックを用意。いずれも監視カメラによる監視を行っており、生体認証とセキュリティカードのWチェックでは、チェック終了後に詰所前ゲート通過を再度行おうとすると、生体認証を再び促される。

「データセンターは、利便性とセキュリティのバランスを保ち、入れるようにしている。また、空調設備についても最新の空調設計を行っており、部屋の両サイドに空調設備を設置して空気の流れに無駄がないようにしている。主にディザスタリカバリやBCPとして引き合いを多くいただいており、OSAKA 2も好調に推移している」(松尾氏)

先ほどのゲートを入っても、再びセキュリティチェックを受ける。ただ、この指紋認証とセキュリティカードによるチェックを受けてもなお、さらにサーバールーム前で最後のセキュリティカードによる入場記録がある

ドローン活用で携帯網の早期復旧を

続いて登壇したKDDI 特別通信対策室長の木佐貫 啓氏は、災害時におけるエンドユーザーの通信インフラ確保のための取り組みを紹介した。なお東日本大震災を契機として、KDDIは陸上自衛隊の各地方の方面隊との協定をはじめ、さまざまな取り組みを行っており、この記事では2016年に起きた熊本地震に関連するトピックスについて説明する。それ以外の取り組みについては、「KDDI、陸自中部方面隊と災害協定 - 着実に進めていく災害対策」や「シン・ゴジラにも出てきた「00000JAPAN」、熊本地震で得た教訓は?」をご覧いただきたい。