この夏、大きく話題を集めた「シン・ゴジラ」をご覧になっただろうか? 「現実対虚構」というキャッチコピーの通り、劇中に登場するゴジラは「巨大不明生物」という名の虚構、自衛隊などゴジラと対峙する日本国政府が現実としてストーリーが進む。
この「現実」は、庵野秀明監督らの綿密な取材を元に構成されており、「リアル」に忠実であるとの評判が多く見られる。そうしたリアルな描写の1つに「テレビ放映」がある。実は、この映画には地上波キー局5社すべてが協力としてクレジットされており、たびたび登場するテレビ放映にも現実の素材が利用されている。
幅広い範囲に被害を与える「自然災害」の一つであることから、災害時によく見られる「L字型画面」の災害情報の告知画面もゴジラ登場後にずっと流されている。その中に、テレビ局から素材を流用したためか「災害時の公衆Wi-Fi『00000JAPAN』が誰でも利用できます」という文面がデカデカと表示されていた。
この「00000JAPAN」の運用などを行っている無線LANビジネス推進連絡会 運用構築委員長の大内 良久氏に話を聞いたところ「特に『使う』という話は聞いてませんでした(笑)。(00000JAPANの)存在を知っている方は気付いていたようですが」と、映画への「出演」を知らなかったことを明かす。
開始2年で初めての運用に
00000JAPANについて改めて説明しよう。NTTドコモやKDDI、ソフトバンクが提供する公衆Wi-Fiサービスは、基本的に契約ユーザーしか利用できない。これらを、地震や台風などの災害時に限って緊急時の共通SSIDを用意し、契約者でなくても誰でも利用できるようにしたものが「00000JAPAN」というわけだ。
東日本大震災を教訓に始まったこの取り組みは2013年9月に同震災被災地の岩手県・釜石市で実証実験を行い、2014年5月に正式運用を始めた。2014年8月に起きた広島土砂災害では、実際に稼働を検討したものの実現せず、今年4月に起こった熊本地震で初めて実運用に至った。直近でも台風10号によって被害を受けた地域の避難所で00000JAPANが運用されている。特に熊本地震では、テレビ各局が「00000JAPANが運用されている」旨の報道を行っており、覚えているという方も少なくないのではないだろうか。
2ページ「九州全域で5.5万アクセスポイントが稼働」
3ページ「熊本地震で見えた課題は?」
4ページ「災害対策と地方創生の両立を」