ランニングとウォーキング

これは多くのスマートウォッチが備えている機能だ。アクティビティとしてのランニングやウォーキング、または自動検出したウォーキングのデータに基づいて自動的に最大酸素摂取量を推測してくれる。ゲームでキャラクターに表示されているHPの最大値は、どちらかというとこうして推測されたVO2maxの値に近いイメージになるかと思う。

例えば、次のスクリーンショットはGarmin fēnix 7でウォーキングから自動的に推測された最大酸素摂取量だ。

  • Garmin fēnix 7が自動推測した最大酸素摂取量

    Garmin fēnix 7が自動推測した最大酸素摂取量

最大酸素摂取量がわかると、マラソンの予測タイムなんかも表示できるようになる。筆者の場合、次のような予測時間が表示されている。この予測時間は結構現実的なところなので、この最大酸素摂取量は現実的な値が推測されているように思う。

  • 最大酸素摂取量はマラソンの完走時間の予測にも使われる

    最大酸素摂取量はマラソンの完走時間の予測にも使われる

Garminのデバイスは基本的に自動的に計測を行うので、Garmin Connectアプリで確認するとこんな感じで最大酸素摂取量が自動的に推測されていることを確認できる。

  • Garmin fēnix 7で最大酸素摂取量を自動推測

    Garmin fēnix 7で最大酸素摂取量を自動推測

なお、最大酸素摂取量をはじめ、必要なデータがそろうと、次のような感じで健康年齢も表示してくれるようになる。

  • Garmin fēnix 7の取得データによる健康年齢

    Garmin fēnix 7の取得データによる健康年齢

筆者の場合、Polar Pacer Proのウォーキングテストによる最大酸素摂取量が53、Germin fēnix 7による最大酸素摂取量が50前後なので、だいたいこのあたりなんだろうなと思う。それ以外の種々のデータとも一致するところが多い。

何もしないテスト

最大酸素摂取量は最大心拍数と安静時心拍数から推測することができるという研究もあり、実はランニングやウォーキングをせずに推測することができる。例えば、Polarにはフィットネステストという機能があり、横になって5分間安静にしていると最大酸素摂取量を推測してくれる。運動する必要がないのでビジネスマンには垂涎者の機能と言えるだろう。

しかし、この機能はあまり正確とはいえないところがある。筆者の場合、このテストでは最大酸素摂取量は64と出る。この値はかなり高い。最大酸素摂取量64の人と同じ時間でフルマラソンが完走できるかと言われれば絶対に無理であり、どう考えてもこの値は高すぎる。

ただし、絶対値ではなく、スタミナの推移を見る方法としてフィットネステストを使うという方法はありだ。最大酸素摂取量が増えていけば元気レベルが上がっており、減っていればヘタって行っていることがわかるのだ。

スマートウォッチにVO2maxの機能がなくてもいける

ちょっと前のモデルのスマートウォッチや廉価なスマートウォッチには、最大酸素摂取量の推測機能が搭載されていないものもある。そんな場合でも、自力での計算は必要になるが、推測する方法はある。

GPS機能が搭載されており、かつ、ランニングに自信があるなら「クーパーテスト」を行ってみよう。これは12分間で可能な限り長距離を走り、その距離から次の計算式で最大酸素摂取量を求めるというものだ。ランニングに自信がある場合はこの方法でいってみよう。

クーパーテスト

VO2max = (12分間で走った距離[m] - 505) / 45

なお、12分間で全力を出し切るランニングは相当に苦しい。

ランニングはノーサンキューという場合、「Estimation of VO2max from the ratio between HRmax and HRrest--the Heart Rate Ratio Method - PubMed」で示されている方法を使ってみよう。こちらの方法ならほぼすべてのスマートウォッチで使えるはずだ。この計算では最大心拍数と安静時心拍数さえわかればよく、次の計算式で計算できる。

Estimation of VO2max from the ratio between HRmax and HRrest--the Heart Rate Ratio Method

VO2max = 最大心拍数 / 安静時心拍数 × 15

最大心拍数がわからないという場合には、さらに次の推測値を使う。

最大心拍数の推測値

最大心拍数目安 = 220 - 年齢

安静時心拍数には、寝起きで横になっているときの比較的一日中で心拍数が低く安定しているときの値の平均値あたりを使ってみよう。スマートウォッチでモニタリングしているはずなので、この値は比較的確認しやすいと思う。

この方法はPolarのフィットネステストに近い。フィットネステストは個人のアクティビティやほかのデータも加味するのでまったく同じではないようだが、ニュアンスは似ている。

最大酸素摂取量の計測機能を備えたスマートウォッチが欲しくなったら、「ビジネスマンにオススメのスマートウォッチ4選 | TECH+」あたりを参考にして検討してもらえればと思う。

VO2maxで自分の元気レベルを知っておこう

最近のスマートウォッチは最大酸素摂取量を推測する機能を搭載するものが多くなった。気にしなくても画面のどこかにVO2maxという値が表示されているかもしれないし、スマートウォッチやアプリをいじっているとVO2maxの値が表示されるんじゃないだろうか。

そうしたら、その値が厚生労働省の基準値に達しているか確認しよう(参考「健康づくりのための身体活動基準2013」)。

男性 VO2max [ml/kg/分]
18~39歳 39
40~59歳 35
60~69歳 32
女性 VO2max [ml/kg/分]
18~39歳 33
40~59歳 30
60~69歳 26

最大酸素摂取量が基準値に達していないなら要注意だ。BMI値が推奨値に収まっているか、週に150~300分の中強度運動の運動をしているか、食事のバランスは取れているか、ちょっと見直したほうがよいかもしれない(参考「World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour - PubMed」)。

最大酸素摂取量は「フィットネスレベル」と表現されることもある。この場合の「フィットネス」をほかの日本語に置き換えるなら「健康レベル」とか「元気レベル」といったことになる。言葉の通り、最大酸素摂取量は健康の指標にもなっているので、低い場合にはリスクがあると認識しておいたほうがよいだろう。

スマートウォッチが計測するのは心拍数を基本としつつ、ここに位置情報や加速度情報、気圧情報などを加え、さまざまな心身の状態を推測してユーザーに教えてくれる。このデータを活用しない手はないのだ。なかなか健康に気を使うことが難しい忙しいビジネスマンほど、スマートウォッチの機能を活用して健康維持に役立ててもらえればと思う。