太っていくビジネスマン
ビジネスマンは年々太っている(参考「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 - 厚生労働省」)。年を重ねるごとにBMI値は増え、健康的と言われる範囲から離れていく。特に男性の方が太っている人が多く、ビジネスマンとしては好ましいとは言えない状況にある。
そこで本連載では、2020年に世界保健機関(WHO: World Health Organization)が公開したガイドライン「World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour - PubMed」が説明している「週に150~300分の中強度運動。週に300分以上の中程度の運動や、週に2回以上の中強程度の筋トレも行うと、さらに上の健康を目指すことができる」を指針として取り上げた。
これまでは「中強度の運動」としてウォーキングを取り上げ、どのようなウォーキングなら生活習慣として取り込めるか、また、どんな工夫をすれば効果を上げることができるかを説明してきた。スマートウォッチによる計測を合わせることで効果的なフィードバックが得られることは何度も示してきたところだ。
そして、次は「さらに上の健康を目指すことができる」という「筋トレ」を取り上げる。筋トレが健康においてさまざまな効果をもたらすことは多くの研究が示しており、一生取り組んで行きたい運動だ。しかし、筋トレはウォーキングよりも習慣として取り込むのが難しいかもしれない。まずはこの辺りをどうやって乗り越えるかから考えてみよう。
筋トレの効果が目に見えるようにするには時間がかかる
人の体は常に骨格筋の分解と合成を行っている。筋トレを行い、かつ、必要な栄養を摂取して十分な休息が取れると、この分解・合成のバランスをちょっとだけ「合成」側へ寄せることができる。
筋トレを行うと体内では即座にその運動に対する反応が起こる。筋トレの強度・栄養・休息など複数の条件が満たされていれば、合成の方が優位になり結果として骨格筋の肥大化や神経系の発達が期待できる。
しかし、である。1回の筋トレで得られる成果は目に見えるほどは大きくない。すごく小さい。筋トレをして目に見えて体つきが変わるのには、通常何年もかかる。最大効率で進めたとしても、最初の数カ月は目に見える変化は出てこない。最初の1カ月で目に見える変化が出ているとすれば、相当筋トレと相性のよい体質および環境下にあるか、それは筋トレの効果ではなく除脂肪の効果で筋肉が見えやすくなった結果ではないかと推測される。
筋トレによる骨格筋の増加は、ずっと続けて年単位で見た目の違いとして現れるものだ。仮にビジネスマンが本気で筋トレに取り組んだとしても、除脂肪をせずにこれだけで体格を変えるには長い時間がかかる。それだけに、筋トレはいかにして「生活の一部にするか」が大切だ。短期間で終えるようなものではなく、生涯付き合っていく趣味や日常にする必要があるのだ。
場所という「要因」を考える
筋トレを日常にすることを考える場合、まず「場所」から考えてみよう。
最も手軽なのは自宅で行うことだ。特に最初は自分の体の重さを使った「自重ウエイトトレーニング」が手軽だ。腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワット、といった運動は学生時代に部活で行ったことがあるんじゃないだろうか。こうした自重によるウエイトトレーニングはすぐに始めることができる。手軽さの上では最も取り組みやすい。
近くに運動公園があれば、そこでトレーニングするという方法もある。公園には鉄棒があることもあり、そこで懸垂ができる。これも自重ウエイトトレーニングだ。運動器具や遊具が設置された公園も多く、そうした器具を使った自重ウエイトトレーニングもよい。外に出ることで気分転換にもなるし、天気がよい日は気持ちもよい。
スポーツジムに通うという方法もある。スポーツジムにはトレーニングマシンが導入されていることが多い。トレーニングマシンはカッコイイだけではなく、身体のそれぞれの部位をウエイトトレーニングすることができるし、筋トレも設計しやすく実施もしやすい。トレッドミル(ランニングマシン)やエアロバイクもあるので、スポーツジムは有酸素運動がしやすいのも便利だ。
場所 | 主な内容 |
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自宅 | 自重によるウエイトトレーニング。ダンベルやバーベル、ゴムなどを使ったウエイトトレーニングなどもあり。 |
運動公園 | 自重によるトレーニング。公園にある運動器具や遊具などを使った自重ウエイトトレーニングなど。 |
スポーツジム | フィットネスマシン、ダンベル、バーベル、自重などによるウエイトトレーニングなど。 |
健康的な体を手に入れる、またはキープする、という本連載の目的からすると、選択するのは上記のどれであってもよいと思う。自重だと筋トレに限界が来るかといえば、健康目的であればそれはない。自重トレーニングだけでも全身を筋トレすることは可能であり、慣れてくればかなり高負荷のトレーニングを自重だけで行うことができる。ちょっと場所をとってもよいなら、ベンチとダンベルを購入するとトレーニングの幅がすごく広がる。あとはちゃんとコツコツトレーニングをするだけだ。