ホール選手が年間チャンピオンに王手
決勝戦のファイナル4に残った4人の選手のうち室屋選手、ホール選手、マクロード選手は2009年デビューの同期組。一方、チャンブリス選手は2003年のレッドブル・エアレース開始から全シーズンに出場した唯一のベテランだ。
冒頭にも書いたが、室屋選手とホール選手が揃ってファイナル4に残った場合、室屋選手が年間チャンピオンになるパターンは1つだけ。室屋選手が1位で、ホール選手が4位になった場合だ。
ファイナル4は4名の選手が順に飛び、タイムで順位を決める。1人目はマクロード選手だったが、なんといきなりゲート2でパイロンヒット。そしてゲート8でインコレクト・レベルの判定を受け、5秒ものペナルティを受けてしまった。記録は1分4.028秒。これではホール選手は、よほどの大失敗をしなければマクロード選手より下になることはない。ホール選手の年間チャンピオンは、かなり確実になってしまった。
逆に言えば、ホール選手は3位を狙ってノーペナルティの飛行をすればよく、千葉大会での優勝を無理に狙う必要がない。室屋選手が千葉大会で優勝できる可能性はむしろ高まったとも言える。
2人の王者、最高のフライトでエアレースに終止符
室屋選手の飛行順は2番目だ。11年間のエアレース人生の集大成とも言える最後のフライトは、58.630秒でノーペナルティ。数字だけ見ればラウンド・オブ8より遅いが、台風の接近で徐々に風が強くなっていることを考えれば充分に速いタイムだ。ラウンド・オブ14で消えるという悪夢から這い上がり、最後の舞台を完璧に終えた室屋選手は、感謝の言葉を無線で送信してレースエリアを後にした。
3人目のチャンブリス選手もノーペナルティの59.601秒で、すべてのレッドブル・エアレースに参加し続けたベテランは最終戦のファイナル4までフル出場を果たした。
そしてついにその時が来た。レッドブル・エアレース最後の年、最後の大会のファイナル4の最後のフライトの栄誉を得たのは、ホール選手。強くなる風の中で、ややふらついて見えるような場面もあったが確実にゲートを通過し、ノーペナルティでゴールゲートを通過した瞬間、レッドブル・エアレースと銘打たれたすべてのレースが終了した。タイムは1分0.052秒で、狙い通りの3位。コックピットで順位を聞いたホール選手は、勝利の雄叫びを上げた。ホール選手の年間チャンピオンは初だ。
2019年レッドブル・エアレース最終戦。千葉大会の優勝は室屋選手、年間チャンピオンはホール選手と、2009年同期デビューの2人が、栄冠を分かち合う結果になった。台風接近で中止も危惧された中、時間繰り上げでファイナル4まで決行。ラウンド・オブ14からの「最速の敗者」での室屋選手の復活、チャンピオンだったソンカ選手の敗退。レッドブル・エアレースのファンの伝説になる、歴史的な大会が幕を下ろした。