使うべき森林と使わざるべき森林
ただし、だからといって生態系や自然環境保護といった問題を盾に木材資源を「使わなければ良い」というのは大きな間違いだ。そういった展開はあまりに短絡的すぎる。
たしかに世界の森林面積は減少傾向にあるが、森林には「保護する森林」と「資源生産を担う森林」の2種類があり、その境界を曖昧にしてはいけない。保護する森林とは、生物多様性の保全や土砂災害の防止、水源のかん養といった森林の多面的機能を享受するために必要な森林を指す。この森林はあくまで保護すべき森林であり、資源生産を行う森林ではない。
私たちが資源として使っていくべきは、資源生産を担う森林である。そして、その森林こそが人工林である。人工林は、木材生産のために人の手を加え育成されている森林で、植林から伐採までを人が管理しながら行う。
世界における人工林面積は2億9400万haであり、地球上の森林全体の7%を占める。さらに、この人工林面積は1990年から2020年にかけて1億2300万ha増加しているという。
つまり、世界の森林破壊が進んでいる主な原因は「保護する森林」から資源を得ているということだといえよう。さらにいうと、私たちもそれに加担している可能性だってある。ホームセンターで買った本棚の材料がどういった経緯で辿り着いたかなど、消費者は気にもかけない。食品の原材料を気にする人は見かけるのに、木材製品の原材料を気にする人は見たことない。
本当にそれでいいのだろうか。
しかしながら、保護する森林の伐採によって生計を立てている人もいれば、適切な医療や学習をするための道路開通などのインフラ整備によって伐採を余儀なくされるケースもあるだろう。それは自由経済や弱肉強食の社会構造、一極集中型の消費形態など、私たちが生んだ歪みの被害者という見方もある。これらはどれも、環境・社会・経済が絡み合った非常に難しい問題だ。
「良いこと」といえる木材の使い方
さて、ここで冒頭の質問に戻るが、「木材を使うことは良いこと?」については、大前提として人工林から適切に生産された木材でなければ「良いこと」にはならない。不当に伐採された木材を使うことは、あくまで地球環境上「良いこと」ではない。
また、世界には森林認証制度がある。同制度では、第三者機関が国際基準に則り、森林管理や木材などの製造・加工・流通が適切に行われているのかを審査する。その審査を通過した木材にはラベルが付けられ、森林認証製品として販売することができる。そういった、森林認証をうけた木材を使うことは、たしかに「良いこと」になるのだろう。
今回は、木材を使うことについての内容だったが、これはあくまで世界の視点から見たものだ。次回は日本について詳しく話していく。
参考資料