「日本国土の約70%が森林」「日本の木材を使って林業に還元していこう」といった言葉を、何度も耳にしたことがあるのではないだろうか。
たしかに都会の喧騒から抜け出せば、探さなくとも山や森が目に入るため、3分の2が森林であることは間違いなさそうだ。また、日本のような国土が小さく資源に乏しい島国にとって、大量にある森林はまさに「宝の山」といえよう。その宝物の1つである木材を活用することで、地元の林業、ひいては地域の活性化につなげていこうとするのも理解できる。
では、「木材を使うことは良いことだ」、と言いたいところだが、実はそう簡単な話ではない。「木材を使うこと」にも影は存在する。今回は、そういった日本の林業と木材産業の光と影について話したいと思う。
「木材を使うこと」の功罪
まず、木材を使うことが良いかどうかについてだが、結論からいうと「良いこと」である。理由は単純明快で、木材は"再生産可能"な資源であるからだ。石油や石炭などの化石燃料は枯渇性の資源であるのに対し、木材やバイオマスといった天然資源は再生産が可能な資源である。
簡単に関係式を示すと、前者は「地球の資源増加量<人間の利用速度」であるのに対し、後者は「地球の資源増加量>人間の利用速度」となり、木材を資源として使うことは「良いこと」と考えるのが一般的であろう。持続可能な社会にしていくには、生活の豊かさとともに進行する資源の枯渇を止め、森林や木材などの再生産可能な資源と共存する道に向かって走り出さなければならない。
しかし、これはあくまで理想の話だ。現実は少し違う。
国際連合食糧農業機関(FAO)の調査では、1990年から2020年の30年間で世界の森林面積が約1億7800万ha減少しているという。これは、日本国土の約5倍に相当する面積だ。
一方で、1990年以降の森林面積の純減速度は、1990年~2000年間の784万ha(年平均)から、517万ha(2000年~2010年)、474万ha(2010年~2020年)と鈍化しつつある。これは一部地域での自然拡大活動によるものだが、それでもアフリカ地域の森林純減速度は加速し続けているのが現状だ。
これらを踏まえると、木材がいくら再生産可能資源であるとはいえ、持続可能な使用量を凌駕する勢いで消費しているように思える。これでは「地球の資源増加量>人間の利用速度」の関係式が成り立っていないのではないか。このような情報を見れば、「木材を使うことは森林破壊につながる」という意見も出てくるだろう。