AIの活用について
--BizStack Assistantの発表会では、ChatGPTにはこだわらないとおっしゃっていましたが、今後、他のAIを利用することもありえますか--
上田氏: :すでにGPT-4をテストしていますし、Amazonが提供している他のLLM(大規模言語モデル)も評価しているので、その時々でベストなものにどんどん塗り替えていこうと思っています。
--AIは1つの汎用AIを活用しますか、それとも分野ごとに利用するAIを変えるといった具合に細分化していくのでしょうか--
上田氏: :やり方はいろいろありますが、現在はLLMの改善のスピードがとても速いので、まずはその進化に乗っかっていこうと思います。業界特化型も見ていかないといけないかもしれませんが、われわれは、業界特化というより、お客様ごとに精度を上げていく仕組みを実現したいと思います。
--今までAIブームは何回かありましたが、今回の生成AIはこれまでと違うと思いますか--
上田氏: :今までは、AIのエンジニアが3カ月程度ついて、お客様ごとにAIを作るといったように、一個一個手作りしないといけませんでした。そうすると、データを集めて、トレーニングして、評価という流れになるので、お金も時間もかかります。
しかし生成AIは、みんなが使えるものがポーンと出てきた感じです。敷居が100分の1くらいに下がっているとでもいいましょうか。また、今までのAIは判断して終わりだったのですが、生成AIは「YESですか、NOですか」といったように、何でも答えが出せるようになりました。
--AIの進化によって、今後、どういった展開が考えられますか--
上田氏: :もうすでに変わりつつありますが、生成AIが出てきた当初は、文字で聞いたら文字で返していましたが、現在は、音声で聞いたり、動画を見せたり、画像を見せて何か聞いたり、マルチモーダルになっています。したがって、今はチャットで行っていますが、言葉で聞いて画面で返すとか、音声で聞いて言葉で返すことも可能になります。
例えば、街中の店舗ではスタッフがインカムを付けてチームで仕事をしていますが、そこにAIが参加すると、「何センチの靴の在庫はありますか」と聞いた時に、人間が答えるのではなく、AIのアシスタントが在庫のデータベースを見て在庫を確認して、それをロボットが取りに行って持ってくるといったことも可能になります。
また、カメラの映像をAIに見せて変化を見つけてもらうなど、できることの範囲が広がっていて、質問を投げたらそれを回答するだけでなく、チームメンバーとして、従業員の代わりに仕事をしてくれることがどんどん増えてくると思います。
アイデアを生まれやすくするための社内カルチャー
--ビジネスを拡大する際に重視しているポイントはありますか--
上田氏: :Googleで働いていた時にやっていたことですが、プロトタイプやデモはすごく大事だと思います。ちゃんと動いて体験できるデモを、いかにたくさん、早く作るかが重要です。例えば、社内でHack Dayをやって、自分の思いついたアイデアを1日かけて作り、みんなで見せ合い、その中からいいアイデアを拾い上げてプロダクトにしていくといった手法が非常に役に立つと思います。
--社内での新たなアイデアを生まれやすくするために、工夫していることはありますか--
上田氏: :さきほどの米国の楽天的なカルチャーにも重なりますが、社員それぞれ好き勝手にやらせておくと、面白いものが出てきます。マネージャーは常に「最近、面白いものあった?」と自分のチームメンバーに問いかけ、会話からわかったその人がやりたいことを自由にやらせていると、面白いものが出てきます。
--日本で取り入れている米国の習慣はありますか--
上田氏: :日本のメンバーは転職組が多いので、それまでの経験に基づく常識があって、自分で枠を設定してしまう人がいます。しかし、われわれはみなさんのポテンシャルをフルに引き出したいので、『自由にやって』『勝手にやって』と言っています。承認をとるためのミーティングは止めて、自分で判断して、後追いでOKを出すことを標準にしたいと思っています。
--どういった人材を求めていますか--
上田氏: :われわれは、生成AIのアプリケーションを作る会社です。AIエンジニアがAIモデルを作るのではなく、AIを使って世の中の問題を解決していくことに取り組んでいます。この分野は、2年くらい前にはなかったので、これから作っていく分野だと思います。つまり、教科書がない面白い分野であり、自分たちが解決した方法が世の中のスタンダードになっていくかもしれません。エンジニアとしては魅力的な分野であるので、会社のリソースをどんどん投入しています。今、採用を増やしているので、興味があれば、いらしてください(笑)。