森永製菓は5月9日、パッションフルーツ由来の機能性関与成分であるピセアタンノールを含有する同社独自の機能性表示対応食品素材「PASSIENOL」(パセノール)について、ヒトを対象とした実験で、“長寿遺伝子”とも呼ばれるサーチュイン遺伝子の発現がパセノール摂取群において増加することを確認したと発表した。

同発表に際し森永製菓は、パセノールに関する研究成果および新プロジェクトの発表会を開催。パセノールのナビゲーターとして櫻井翔氏が登壇し、世界を舞台に活躍するトップアスリートやパートナー企業とのトークセッションを通じて、その重要性やプロジェクトについて語った。

  • 髙藤直寿氏、清水希容氏、櫻井翔氏、山本尚貴氏、稲田弘氏

    トークセッションに登壇した髙藤直寿氏、清水希容氏、櫻井翔氏、山本尚貴氏、稲田弘氏(左から順)

パッションフルーツ由来素材が長寿遺伝子を活性化

森永製菓が独自開発したパセノールは、パッションフルーツの種子に多く含まれるポリフェノール成分のピセアタンノールを、同社独自の特許技術を用いて抽出し食品原料として製造したもの。その開発は、健康機能素材開発を目指して2006年に開始された植物のアンチエイジング機能に関する研究に端を発し、2012年には工業的な成分抽出および食品原料としての製造に成功。2016年からは、食品原料としての供給が開始されている。

パセノールの主要成分であるピセアタンノールが持つ機能として注目されているのが、長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子の活性化作用だ。哺乳類の体内に7種類存在し、ヒトの各部位に分布するとされる同遺伝子は、細胞に危機が訪れた際の“番人”として細胞が生きのびるよう作用するタンパク質(サーチュイン)を産生するといい、損傷したDNAの修復や酸化ストレスの軽減、オートファジーの活性化など、老化や病気を防ぐためのさまざまな働きを担うとする。

  • サーチュインがもたらすさまざまな働き

    サーチュインがもたらすさまざまな働き(札幌医科大学 久野篤史教授の講演資料より)

このように健康維持に欠かせないサーチュインについて、その活性化には、運動やカロリー制限などといった習慣が効果的だとされている。さらに昨今では、サーチュインに直接作用する活性化薬が探索されている最中で、現在ではブドウの果皮や赤ワインに含まれるポリフェノールの「レスベラトロール」と、前出のピセアタンノールが積極的に検討されている。

そのうちレスベラトロールについては、加齢に伴う運動機能の低下を軽減することがマウス実験により判明しており、心不全につながる心筋細胞の肥大化や、皮膚が薄くなるという老化現象についても、軽減作用があることが報告されている。また同物質は、筋ジストロフィー患者の筋力改善にも効果を発揮するとの研究も見られ、さまざまな疾患の治療に適用できる可能性が示唆されているという。

さらに一方のピセアタンノールについては、これまで述べてきた効果につながるサーチュインの活性化作用に加え、ヘムオキシゲナーゼへの作用により付加的な細胞保護効果を発揮するとされており、さらに幅広い健康効果を持つことが期待されるとする。

ヒトを対象とした実験でもその効果を確認

そして今回森永製菓は、これまで細胞実験においてその効果を確認していたパセノールについて、ヒトを対象としたランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を実施し、その結果を報告した。

同実験では、20代~60代の男女281名を解析対象として、2週間にわたる試験食品の摂取を経て血中サーチュイン遺伝子がどのように変化するのかを調査。すると、パセノールを摂取したグループ全体では、プラセボ群全体に対して、摂取開始から1週間後にサーチュイン遺伝子の発現が有意に増加することがわかったとしている。

また、60代の被験者では摂取後1・2週間後、BMIが30以上の被験者では摂取後1週間後でサーチュイン遺伝子の発現量が有意に増加したとのこと。なお男女別での解析では、BMI30以上の男性および女性全体で有意な効果が見られたという。加えて、閉経後の女性において顕著な増加が見られたことから、森永製菓でパセノールプロジェクトのリーダーを務める松井悠子氏は、ピセアタンノールが女性ホルモン様に対して作用する可能性を示唆した。

  • 閉経後の女性におけるパセノールの効果

    特に閉経後の女性でサーチュイン細胞の顕著な増加が見られたという

  • 森永製菓 パセノールプロジェクトリーダーの松井悠子氏

    森永製菓 パセノールプロジェクトリーダーの松井悠子氏