目指すはトータルソリューションの提供、1社完結の自動化体制
そうしたカスタマファーストでロボットを開発・提供している三菱電機だが、そんな同社の最大の強みは「一元管理できるところ」にあるという。
例えばロボットとリニアトラックを別々に制御している場合、リニアトラックで早くものを目的地に運んだとしても、その目的地にロボットがアクセスするのに時間がかかれば効率が下がってしまう。しかし、一元管理することでロボットとリニアトラックを連動させることができれば、互いを効率よく動かすことが可能となる。こうした「同期性」を出せることが、あらゆるソリューションラインナップを揃えている三菱電機の技術の特徴と言えると武原氏は述べていた。
また、さまざまな機器に対してトラブルや課題を感じた時に、それぞれの機器ベンダに相談する場合、問題の切り分けに時間がかかるなど、時間と労力が必要となることもあるが、三菱電機1社に相談できる環境とすることで、そうした心配を排除できるようになるため、安心につながるだろうと菅原氏は言う。
さらに自動化の推進に向けては、「データの活用が重要になる」という考えから、顧客の現場で生み出された動作データなどを収集、そこから付加価値のあるデータを導き出し、顧客に還元している。近年はトータルソリューションの提供ができるような状態監視ソフトウェアやシミュレーションソフトウェアなど、各種ソフトの開発に注力しており、「いよいよ1社でさまざまな相談に乗れるステージに来たかなと思っている」と、強気の姿勢をみせていた。
そうして開発されたソフトとして、例えば3Dシミュレーションソフト「MELSOFT Gemini」では、三菱電機の製品はもちろん、最終的に顧客がどのロボット製品を使うかを想定し他社のロボット製品部品合わせて約3000種類のデータを標準装備、マウス操作で簡単にシミュレーションを行う環境を構築したという。
また、同社ではAI技術「Maisart」を活用したティーチングレスロボットシステム技術や、遠隔操作ロボットの開発による人が現地まで移動しなくても現場の作業ができる仕組みなど、人手不足解消につながるあらゆる技術を開発していることに加え、パートナーとの連携強化も図っており、すでにロボット関連だけでも200社以上と協力、より顧客ごとにあわせた形での提案ができるように事業展開を図っているとした。
自動化推進に向けた未来を考える
今回、取材の一環として、自動化に対して必要な機器などのものづくりを「見て」、使いこなせるノウハウを「学び」、実現したい手法を「試す」ことが出来る“自動化を支援するための施設”として2018年7月に設立された東日本FAソリューションセンター(東京・秋葉原)を見せてもらった。
取材時、施設内には同社の産業用ロボット「FRシリーズ」として、2023年10月より受注を開始した同シリーズ最大リーチ・最大可搬を実現した「RV-35/50/80 FR」(35kg、50kg、80kg可搬)の実機や、2023年3月より発売開始した、バッテリレスの高性能モータを搭載した「RV-12CR-D」の実機が展示してあった。2018年の設立以降、随時施設内の展示も変更しており、その時々の最新ソリューションを体感できるという。
こうした自動化ソリューションを身近に感じられる施設で実機を見てどういったことができるのかを理解することは、導入に躊躇する企業にとっても目の前で動いているという説得力もあり、導入に向けた一歩を踏み出しやすくしてくれることになるだろう。近年は、海外メーカー、特に中国メーカーからコストを抑えたロボットソリューションが日本市場にも入ってきているが、武原氏は「生産性向上、精度の面では、日本メーカーは負けていないと思っています。国内外メーカーの動向を抑えつつ、新たな価値を創造し、トータルなソリューションを提供できるよう開発を続けていきます。そして、(FAソリューションセンターを含め)顧客とコミュニケーションをしっかり取りながら、あらゆる不安や疑問を解消し、自動化を推進できるよう取り組みを進めていきたい」と語り、自社の強みを伸ばしていくことで、これから進むであろうあらゆる産業分野でのロボット活用に向けた活動を推進していきたいとしていた。