• 電気的特性

電気的特性

先進セラミック材料は、樹脂や金属といったような他の材料と比べて、優れた誘電特性を示します。先進セラミックスは、その組成により、非常に効果的な電気絶縁体となるため、これが最も一般的に使用されている用途ですが、セラミックスは、用途に応じた専用の製造プロセスによって、導電率を付与することもできます。

先進セラミック材料のほとんどは、誘電損失が低いため、高レベルの電磁エネルギーを維持することが可能であり、エネルギーの散逸があったとしても、測定可能な量は非常に小さいものとなります。樹脂、ゴム、ガラスは、優れた電気絶縁体ですが、ファインセラミックスと同等の機械的、熱的、化学的特性を持たないため、セラミックスは、高強度、高耐熱性、高腐食性を求められる環境における電気的特性が必要な用途に最適です。

  • 体積抵抗率

    体積抵抗率(単位:Ωcm)

体積抵抗率は、材料が特定(DC)電界における電気抵抗を示す尺度です。体積抵抗率が高い材料は、電気絶縁体であり、体積抵抗率が低いか、全くない材料は、導電体となります。逆数の関係にある測定値は、電気伝導率であり、材料が電流を妨げる能力ではなく、電流を流す能力を示す測定値です。

抵抗率は、材料の温度に依存します。

先進セラミック材料は、高温でも体積抵抗率が高くなる傾向がありますが、セラミック材料の中には、ある程度の電荷を通過させるように、意図的に設計されているものもあり(通常は、静電気対策セラミックスまたはESD対策セラミックスと呼ばれます)、これらは、材料の寿命を延ばしたり、接触している電気的に脆弱な物体を保護したりするものです。

  • 絶縁耐力

    絶縁耐力(単位:kV/mm)

材料が耐えられる電圧にも限界があります。これは、材料の絶縁耐力として、定量化および測定されます。絶縁耐力は、誘電体(絶縁体)が、絶縁特性を失うことなく耐えることができる最大電圧です。これは、破壊電圧をサンプルの厚さで割ったものと定義されています。絶縁耐力は、サンプルの厚さに大きく依存するものです。そのため、絶縁耐力とともに、厚さも常に提示する必要があります。

先進セラミック材料は、高い絶縁耐力を備えていることが多いため、誘電特性は、セラミックスが電気用途で優れた絶縁材料となる理由の1つとなっています。

  • 鉄道車両用の「熱交換器」として使用される窒化アルミニウム製クーリングボックス

    鉄道車両用の「熱交換器」として使用される窒化アルミニウム製クーリングボックス

  • 比誘電率

    比誘電率(25℃における)

比誘電率とは、材料の誘電率(電荷を蓄積する能力)と自由空間の誘電率の比であり、同じ寸法の真空空間内の電荷蓄積と比較した場合の、印加電圧によって、物質に蓄積される電荷量です。セラミック材料の誘電率は、種類によって大きく異なりますが、多くの配合では、低い値が得られます。誘電率が低いことは、半導体製造や無線周波数(RF)送信機用途での使用に有利である場合があります。

  • 釉薬付き静電気防止バー

    釉薬付き静電気防止バー

  • 誘電正接tan δ

    誘電正接tan δ(25℃における)

誘電正接とは、誘電(絶縁)材料における電磁エネルギーの散逸を本質的に定量化するものです。

この散逸したエネルギー、つまり損失は、発熱に繋がります。ファインセラミックスは一般に、損失が少ないため、発電およびユーティリティ用途での使用に最適な材料です。

クアーズテックでも、低損失または厳密な制御を必要とする用途向けに、特別グレードの低損失材料を用意しています。

  • 電気集塵装置絶縁体

    電気集塵装置絶縁体

先進セラミック材料:高い電気的特性

アルミナ | 低い誘電損失

アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)は、優れた誘電挙動を含む、幅広い特性を備えている、一般的に使用されるファインセラミックスです。クアーズテックでは、特定の配合をすることで、低い誘電損失やその他の用途固有の要件に合わせて設計することを可能としています。

窒化アルミニウム | 高い熱伝導率を備えた絶縁耐力

窒化アルミニウム(AlN)は、高い絶縁耐力と熱伝導率の独特な組み合わせにより、電子基板や熱問題を伴うその他の電気用途で熱を迅速に放散する優れた能力を備えているため、多くの電子用途で使用されています。

ケイ酸塩 | 電気絶縁性

ケイ酸塩は、電気絶縁性と不活性が求められる用途でよく使用されており、化学実験器具などの用途ではコスト効率の優れたオプションです。

  • ステアタイトは、その低い誘電損失と高い絶縁耐力の組み合わせを提供するとともに、安価に製造可能です。
  • ムライトは、優れた絶縁耐力と熱衝撃特性があります。

炭化ケイ素 | 制御された体積抵抗率

クアーズテックでは、炭化ケイ素(SiC)の製造プロセスを特定の可変体積抵抗率に合わせて精密に調整しています。たとえば、PureSiC炭化ケイ素は、幅広い用途固有の要件に適合するように、高、中、低の抵抗率を備えたいくつかのバリエーションで提供されています。

特殊用途セラミックス

クアーズテックの材料ポートフォリオには、特定の用途の独特な要件に適合するように設計された、さまざまな特殊セラミックスが用意されています。これらの特殊材料のいくつかは、優れた誘電挙動を示します。

  • チタン酸塩配合物は、アンテナの誘電体共振器に使用するために、特別に設計されているものです。
  • 静電対策セラミックスは、蓄積された電荷をゆっくりと消散させて、急速な放電やアーク放電を防止することで、デリケートなマイクロエレクトロニクス部品を、静電気から保護できるように設計されています。
  • カーボンとグラファイトは、ここで説明した他の多くのセラミック材料とは異なり、優れた導電体です。