またこれまで、マタタビのどの部位が最も効果的なのかを調べた報告もなかったという。そこで続いては、どの部位にネコに対する有効成分が多いのかが調べられた。その結果、有効成分の含量は、通常の実、虫嬰果、緑の葉、白の葉、枝の順で多いことが確認された。このことから、マタタビ商品の開発はマタタビの実を原料とするのが有効と考えられるとする。

しかし、マタタビの実は7月~8月にしか収穫できないため、より長く収穫できる葉に着目し、有効成分が多いのはどの時期に収穫した緑葉なのかを調査したとのこと。すると、岩手県で収穫した葉では、5月から8月中旬ごろに有効成分量が増えることが確かめられた。

次にマタタビ葉を乾燥させた時に生じる有効成分の、量と質の変動について詳細な解析が行われた。まずマタタビ葉を1週間乾燥させ、新鮮な葉と比較したところ、乾燥により有効成分量が半減することが判明した。ただし、新鮮葉の有効成分は大半(96%)が化学物質「ネペタラクトール」だったのに対し、乾燥葉では同化学物質とその他の有効成分の「マタタビラクトン類」がおよそ半々の割合へと変化していたという。

研究チームは2022年、両成分が混ざり合うことでネコの反応が強まることを解明済みだ。そこでネコに対し、新鮮葉と乾燥葉のそれぞれの抽出物を同時に提示する実験が行われた。すると、乾燥葉の方がネコはより長時間マタタビ反応を示すことが確認されたという。つまり、マタタビ葉は乾燥処理を行うことで、よりネコに対する効果が高まることがわかったのである。

  • マタタビの各部位の有効成分含量、季節変動、乾燥処理効果。

    マタタビの各部位の有効成分含量、季節変動、乾燥処理効果。(A)マタタビの通常の実、虫嬰果、緑葉、白葉、枝の写真。(B)通常実、虫嬰果、緑葉、白葉、枝中の有効成分の総含量。(C)3~10月に採取されたマタタビ緑葉中の有効成分の総含量。緑葉では、有効成分は5月から8月中旬にかけて多い。(D)新鮮葉、1日乾燥葉、4日乾燥葉、7日乾燥葉中の有効成分の含量。(E)新鮮葉と7日乾燥葉の抽出物を塗ったシャーレを同時に提示し、ネコの反応を比較した実験の様子。(F)新鮮葉と7日乾燥葉の抽出物に対するネコのマタタビ反応時間。有効成分量は減少したが、ネコは組成が変化した7日乾燥葉をより好み、有意に長い時間反応が示された。(出所:岩手大プレスリリースPDF)

研究チームは2021年には、ネコがマタタビを嗅ぐと、通称「幸せホルモン」と呼ばれる「βエンドルフィン」の分泌が促進されることを発表済みだ。そして今回の有害性が認められないという研究結果と合わせると、マタタビはネコにとってポジティブな作用をもたらす、安全性の高い嗅覚エンリッチメントであるといえるとしている。