岩手大学とNrf2の両者は9月28日、マタタビをネコに与えても依存性や中毒性が見られず、安全性が高いことを初めて科学的に立証したことを発表した。

また、マタタビの葉を乾燥させると、有効成分の組成が変化してネコへの効果が高まることも見出し、今回の研究成果を活かして開発したネコ用マタタビスプレーをNrf2より販売することも併せて発表された。

  • 今回の研究の概要。

    今回の研究の概要。(出所:岩手大プレスリリースPDF)

同成果は、岩手大の宮崎雅雄教授、同・上野山怜子大学院生を中心に、名古屋大学、英・リバプール大学、Nrf2の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「iScience」に掲載された。

ネコはマタタビを与えられると陶酔したような反応を示すため、安全性を心配する飼い主も多い。しかし意外にも、ネコに対するマタタビの依存性や毒性を調べた研究報告はこれまでなかったという。また市販のマタタビ製品の中には効果が低いものもあり、マタタビのどの部位をいつ収穫すると有効成分の量が多いのかといった知見も必要とされていた。そこで研究チームは今回、マタタビがネコに与える影響を検証すると同時に、効果的なマタタビの収穫条件についても調べたという。

まず安全性の面では、依存性、ストレス誘発性、肝臓・腎臓への毒性という3つの観点からの調査が行われた。最初に、マタタビがネコに依存作用を示すのかを、マタタビ葉の抽出物を4時間提示し続けて行動を観察したとのこと。その結果、ネコは4時間のうち合計で10分程度(約4%)しかマタタビに接触せず、マタタビへの興味も時間が経つと次第に減少する傾向が見られたとする。もしネコに依存症を引き起こすのであれば、マタタビを見つけて以降は接触し続けて、興味が薄れていかないと予想されるため、ネコのマタタビ反応に依存性はないということになると結論付けている。

次に、マタタビに反応することで逆にストレスが誘発されるのかを検証するため、ストレス刺激があると上昇すると報告されている「コルチゾール」と「グルコース」の血中濃度が調べられた。しかし、マタタビ反応後と通常状態で、両値に統計的に有意な変化は見られなかったという。このことから、ネコはマタタビを嗅いでもストレス応答に関わる反応を示さないことが確認されたとする。

  • マタタビ反応の依存性、ストレス誘発性評価試験の様子と結果。

    マタタビ反応の依存性、ストレス誘発性評価試験。(A)マタタビ葉の抽出物を染み込ませたろ紙を、ネコに4時間提示し続けた行動試験の様子。(B)あるネコの行動パターン。大半の時間、マタタビに反応も接触もせずに過ごしていた。またマタタビへの興味も次第に減少した。(C・D)通常状態とマタタビ反応後のネコから採血して測定された血中コルチゾール濃度(C)と血中グルコース濃度(D)。どちらのストレス指標も共に、通常状態とマタタビ反応後で統計的に有意な差は認められなかった。(出所:岩手大プレスリリースPDF)

さらに、マタタビを長期間与えられたネコにおいて、肝臓や腎臓への悪影響がないかが調べられた。最長で約3年にわたってマタタビを与えられた9歳未満のネコたちの血液検査により、肝障害と腎障害の指標となる血中バイオマーカーの濃度をモニタリングしたところ、すべてのネコで、肝障害の指標となる「アラニンアミノトランスフェラーゼ」や、腎機能障害の指標となる「対称性ジメチルアルギニン」と「クレアチニン」などの値は正常範囲内であり、長期的にマタタビを使っても肝臓と腎臓への害は見られないことが示されたとしている。

  • 長期間マタタビを与えられたネコの肝障害・腎障害の評価試験の結果。

    長期間マタタビを与えられたネコの肝障害・腎障害の評価試験。各ネコのマタタビ反応の経験日数を横軸に、肝障害の指標となる血中ALT濃度(A)、腎障害の指標となる血中SDMA濃度(B)と血中クレアチニン濃度(C)が縦軸にプロットされている。青色の領域は、各バイオマーカーのネコにおける正常値範囲。すべてのネコで、3つのバイオマーカーの値は正常値範囲内に留まっていた。また、マタタビ反応の経験日数が長いほどバイオマーカーの値が上がるような傾向も、統計的に見られなかったとした。(出所:岩手大プレスリリースPDF)