農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、不二製油グループ本社、不二製油の3者は9月8日、動物性食品と植物性食品のおいしさの違いを明らかにすることを目的として、動物性・植物性のとんこつ(風)スープに適用可能な「官能評価法」を開発したことを発表した。
同成果は、農研機構 食品研究部門 食品流通・安全研究領域 分析評価グループの中野優子研究員、同・早川文代グループ長補佐、不二製油グループ本社 未来創造研究所 新素材創出グループ 健康機能素材創出チームの平野啓太氏、不二製油 基盤新技術開発部 第三課の富研一課長らの共同研究チームによるもの。
新興国の経済成長や世界的な人口増加に伴う動物性タンパク質の供給不足、宗教や思想上の理由による食事制限、消費者の食嗜好の多様化などに対応するため、食の選択肢の1つとして、植物由来の食品に対する需要が世界的に高まっている。
しかし植物性食品は、動物性食品と比べて物足りないという評価を受けることもある。そこで研究チームが2021年より開始したのが、植物性・動物性食品のおいしさの違いを明らかにすることを目指した研究だ。
食品のおいしさの測定手法の1つに、官能評価がある。同手法では、人が実際に食品の匂いを嗅いだり食べたりした時に感じる香りや味などを測定するというもので、農研機構ではこれまでにさまざまな食品について実施しており、多くの知見を有しているという。今回の研究ではそれらを活かし、動物性・植物性両方の食品のおいしさに関わる香りや味の特徴を把握し、その違いを明らかにできる官能評価法の開発を目指したとする。
今回の研究で対象とされたのは、典型的な動物性食品の1つで、海外人気も高い“とんこつラーメン”だ。とんこつラーメンについては、宗教・思想・健康上の理由から、植物性の代替食品の需要が高まっている。そのため現在では、インスタントやカップラーメン、業務用など、さまざまなバリエーションのとんこつスープおよびとんこつ風スープが市場に流通している。そこで研究チームは、今回の研究試料として33種類の市販の動物性・植物性のとんこつ(風)スープを選んだとする。
まず、33種類のとんこつ(風)スープについて、訓練を受けた熟練パネリストが実際に匂いを嗅いだり食べたりして、その特徴を言葉で表現した。そこで得られた289単語の整理を行い、動物性・植物性のとんこつ(風)スープの特徴を表現する33語の評価用語が決定された。
次に、その33種類の評価用語を用いて、熟練パネリスト7名により、代表的な市販の動物性・植物性のとんこつ(風)スープ12種類に関する官能評価が行われた。そしてその結果に対し、データの特徴を少数の変数で表す統計解析方法の「主成分分析」を適用し、各とんこつ(風)スープの香りや味の特徴が視覚的に表された。