パナソニックHDのガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池は、モデルハウス2階の南南東に面したバルコニー部分に、ガラスパネルとして設置。今回は、15cm角の太陽電池モジュールを12枚組み合わせて1枚のガラスパネルを作製しているという。なお現在は1.0m×1.8mのペロブスカイト太陽電池を製造できる新たなラインを組み立てている最中で、2024年の稼働開始を目指しているとのこと。稼働以降は、1枚の大型ガラス一体型太陽電池パネルとして製造する予定だとする。

  • 通常のガラスパネル(左)とガラス一体型ペロブスカイト太陽電池(右)

    通常のガラスパネル(左)とガラス一体型ペロブスカイト太陽電池(右)

現在設置されているパネルでは、透過型のペロブスカイト太陽電池がグラデーション状に配置されている。この配置や密度については調整が可能だといい、空間デザインの面から透過性を高めて解放感を演出したり、セキュリティやプライバシー面での対策として高い密度で太陽電池を配置したりと、用途や場所に応じて使い分けることが可能とのことだ。

  • モデルハウスの外から見たバルコニーのガラスパネル。太陽電池ながら奥の人物が見えるほどの透過性が見て取れる。

    モデルハウスの外から見たバルコニーのガラスパネル。太陽電池ながら奥の人物が見えるほどの透過性が見て取れる。

パナソニックHDによると、今回の実証実験では、発電性能や耐久性に加え、気候などの実使用条件下における長期運用によって生じる課題を洗い出すことで、事業化に向けた技術開発を加速させるという。

「多様なニーズに応えるカスタマイズ性で強みを発揮する」

パナソニックHD テクノロジー本部 マテリアル応用技術センター1部の金子幸広部長は、ペロブスカイト太陽電池の分野における同社の強みとして、インクジェット技術を活用した材料の塗布を挙げる。以前からディスプレイ向けに進歩を遂げてきた同技術を転用することで、大きな面に対して均一に材料を塗布することができ、この点が発電効率という強みにつながっているとする。

  • ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池に関する質疑に答える金子幸広氏

    ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池に関する質疑に答える金子幸広氏

また、地面に対して垂直に設置されたバルコニーのガラスパネルでは、屋根に設置した場合に比べて日射量が劣るため、「今回開発を進めているペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン太陽電池に置き換わるようなものではない」という。しかし、朝夕の太陽が傾いた時間帯には多くの日射受けるため、発電量のピークシフトなどにも有効だといい、シリコン太陽電池では満たすことのできないニーズにも応え得る可能性があるとし、「建造物のガラスのサイズなど、さまざまなニーズに対応するカスタマイズ性という部分で、ペロブスカイト太陽電池の強みが発揮されると考えている」と話す。

なお今回の実証実験は、2024年11月29日までを予定しているとのこと。パナソニックHDは、都市部を含む太陽電池の設置場所の拡大に貢献するとともに、災害時などの電力供給システムの強靭化(レジリエンス向上)への貢献も見据え、早期の社会実装に向けて今後も技術開発を続けていくとしている。