パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は8月31日、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池のプロトタイプを開発したことを発表。また8月より、技術検証を含めた1年以上にわたる長期実証実験を、神奈川県藤沢市の「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」(Fujisawa SST)内に新設されたモデルハウス「Future Co-Creation FINECOURT III」で開始したことも併せて発表した。

同発表に際しパナソニックHDは、Fujisawa SSTにてメディア向け発表会を開催。モデルハウスに設置されたガラス一体型太陽電池を公開するとともに、技術の特徴や今後の展望について説明した。

  • ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池の実証実験が行われているモデルハウスのバルコニー

    ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池の実証実験が行われているモデルハウスのバルコニー

「発電するガラス」を目指し実証実験を開始へ

カーボンニュートラルの実現に向け、さらなる再生可能エネルギー(再エネ)の創出手段として、太陽電池の普及拡大が求められている。しかし山が多く平地が少ない日本においては、メガソーラーのような大規模発電設備の構築は難しく、また建物の屋上も設置面積が限られていることから、建物の窓や壁面などを活用した発電が不可欠となる。しかし、従来より用いられている結晶シリコン系の太陽電池では、透光性やデザイン面の観点から、窓などのガラス部に設置するのは難しかったという。

そこでパナソニックHDが着目したのが、結晶構造の一種である「ペロブスカイト」を有する化合物を用いたペロブスカイト太陽電池だ。有機・無機のハイブリッド構造を持つ同太陽電池は、有機材料の強みである加工性の高さやインクなどの実装手段の柔軟性と、無機材料の優れた半導体特性による高効率性および安定性を併せ持つことから、次世代の太陽電池として注目が集まっている。

同社は現在もペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた研究開発を進めており、その中で、有機LEDディスプレイの生産で培われたインクジェット技術を活用して、基板に直接ペロブスカイト太陽電池を塗布するという製造方法を開発。同方法を用いた太陽電池の性能向上を重ね、800cm2を上回る実用サイズにおいて、世界最高レベルとなる17.9%の発電効率を達成したとする。

  • ガラス上に実装されたペロブスカイト太陽電池

    ガラス上に実装されたペロブスカイト太陽電池

そして今回は、基板としてガラスを用い、2枚のガラスで太陽電池部分を挟み込む構造を採用することで、耐久性・断熱性などの性能面で建築物の窓にも適用可能なガラス建材一体型太陽電池(BIPV)を作製。Fujisawa SSTの新モデルハウスにおいて実証実験を行うに至ったとする。

  • 「発電するガラス」断面イメージ

    「発電するガラス」断面イメージ(出所:パナソニックHD)

バルコニーのガラスパネルで発電量や耐久性を検証

今回公開されたのは、「生きるエネルギーがうまれる街。」というコンセプトのもと、パナソニックグループが代表幹事となって開発が進められているスマートタウンのFujisawa SSTにて、三井不動産レジデンシャルなどにより新設されたモデルハウスのFuture Co-Creation FINECOURT IIIだ。

9月1日に一般見学も開始したという同モデルハウスは、Fujisawa SSTに参画するさまざまな企業のテクノロジーが詰まった建築で、建設から解体までの住まいとしてのライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにする「LCCM住宅」としての認証も取得している。

  • Fujisawa SST内の新モデルハウス「Future Co-Creation FINECOURT III」

    Fujisawa SST内の新モデルハウス「Future Co-Creation FINECOURT III」