今回の研究では、「コバルト(Co)イオン」、「ジ(4-ピリジル)グリコール」、「ピリジンジカルボン酸」を用いて、新たなフレキシブルPCP/MOFを合成したとのこと。その特徴は、Coイオンとカルボン酸イオンがCoイオンで連結して構成される2次元シートが、交互にずれた相互篏合(かんごう)型の2次元シート積層構造を有することだ。

その相互篏合型構造のガス吸着前の細孔は、ガスの吸着サイトとなるポケット同士が分断され、デコボコで波打ったような構造をしている。このような構造では、シート間の相互作用を上回る吸着エネルギーを持つガスのみが吸着挙動を示す。それに対し、ガス分子中でチャネルを通過するための障壁エネルギーが大きい場合、そのガスはチャネルを通過できず、吸着が妨げられてしまう。今回開発されたフレキシブルPCP/MOFは、これらのメカニズムが複合的に作用することにより、特異的な吸着特性を実現していることが明らかにされた。

  • 相互篏合型の2次元シート積層構造によるガスの吸着分離のイメージ。

    相互篏合型の2次元シート積層構造によるガスの吸着分離のイメージ。(出所:京大 iCeMSプレスリリースPDF)

フレキシブルPCP/MOFは、CO2を吸着させるとシート間の隙間が広がってゲートが開き、分断されていたポケット状の隙間同士が相互につながって1次元状のチャネルが形成され、そこにもCO2が取り込まれるという。

  • 今回の研究で開発されたフレキシブルPCP/MOFの構造と、CO2吸着に伴う細孔構造の変化。構造中の隙間は薄黄色で示されている。CO2の吸着前は分断されてポケット状になっている隙間が、CO2の吸着後には1次元のチャネルのようにつながった構造へと変化する。

    今回の研究で開発されたフレキシブルPCP/MOFの構造と、CO2吸着に伴う細孔構造の変化。構造中の隙間は薄黄色で示されている。CO2の吸着前は分断されてポケット状になっている隙間が、CO2の吸着後には1次元のチャネルのようにつながった構造へと変化する。(出所:京大 iCeMSプレスリリースPDF)

そして同時に、N2、CH4、CO、O2、H2、アルゴン、C2H2、C2H4、C2H6など9種類の類似ガス分子について、フレキシブルPCP/MOFはほとんど吸着せず、またCO2を含む混合ガスからもCO2のみを排他的に識別・分離することが確認されたという。

研究チームは今回の研究成果について、多成分を含む混合ガスから狙ったガスを効率良く分離する技術の実現において、今回の成果により一歩前進できたとしている。