比較対象として、JJ2が存在しない場合の単一のジョセフソン接合についても測定が行われた。すると、臨界電流の正負の絶対値は等しくなり、同じ磁場領域では臨界電流値がほぼ一定であることが確認された。このことから、コヒーレント結合によって初めて超伝導ダイオード効果が発現したものと結論付けられたのである。

続いて研究チームは、これらの特徴がJJ1とJJ2のコヒーレント結合により生じていることを確かめるために、数値計算を実施。その結果、コヒーレント結合したJJ1とJJ2について、JJ2の位相差を変化させた時のJJ1の臨界電流が求められた。これにより、数値計算で得られた臨界電流においても超伝導ダイオード効果が現れることが確認されたとしている。

  • 得られた実験結果と数値計算結果。(上)実験で得られた臨界電流の絶対値が、正負それぞれが磁場に対してプロットされたもの。(下)計算で得られた臨界電流の絶対値が、JJ2の位相差に対してプロットされたもの。

    得られた実験結果と数値計算結果。(上)実験で得られた臨界電流の絶対値が、正負それぞれが磁場に対してプロットされたもの。臨界電流の振動(コヒーレント結合)に伴って、正と負の臨界電流の絶対値が異なる磁場領域が系統的に観測された(超伝導ダイオード効果の発現)。さらに、磁場の掃引に対して、正負の臨界電流の絶対値の大小関係が系統的に反転している。(下)計算で得られた臨界電流の絶対値が、JJ2の位相差に対してプロットされたもの。実験結果を再現していることがわかる。(出所:理研Webサイト)

さらに、実験的に得られていた「臨界電流の小さな領域で超伝導ダイオード効果が強く発現する」、「位相差の変化に対応して系統的に臨界電流の絶対値の大小関係が反転する」という、2つの特徴が数値計算結果においても再現できることが判明したとする。

今回の研究成果は、コヒーレント結合という普遍的な物理機構がジョセフソン接合においても有用であり、新機能の開拓に利用できることを示すという。これは、超伝導ダイオード効果に限らず、新奇的な超伝導現象や超伝導素子機能の開拓にコヒーレント結合が有用であることを意味しており、今後のさらなる発展が期待できるとのことだ。また、同効果は将来的な超伝導回路内において、整流素子としての応用も期待されているとする。

また今後は、今回の研究で得られた知見を発展させ、超低消費電力の新しい不揮発性メモリや論理回路への応用の観点から、新しい物質の探索やデバイス応用が行われることが考えられるとしている。