新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、NEC、ノーチラス・テクノロジーズの3者は7月10日、NEDOの「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」(以下「今回の事業」)において、NECとノーチラス・テクノロジーズが、世界最速レベルの性能を持つリレーショナルデータベース(RDB)管理システム「劔(Tsurugi)」を開発したことを共同で発表した。
CPUやメモリなどのハードウェアは進化し続けている一方で、データベース(DB)の管理ソフトウェアは、依然として旧来のハードウェア環境を前提として設計されている。つまり、現在のハードウェアが持つ優れた機能を利用できないため、大量のデータを高速かつ効率的に処理できないことが大きな課題となっているという。
また現在のDB管理システムは、海外企業製が主流であり、日本の情報産業の競争力を強化するためには、高い競争力を有する国産システムの普及が重要な一手となるとする。そこで今回の事業でNECとノーチラス・テクノロジーズの2社は、さらに高性能化が進むソフトウェアの次世代を見据え、独自のDB管理システムの開発を2018年度からスタート。そして今回、劔の開発に成功したことが発表された。
劔は、メニーコアや大容量メモリなど、次世代DBに用いられるハードウェア環境に適合したシステムであり、ハードウェア性能が向上するほどシステム性能も高まる特性を備えているとする。さらに、バッチ処理中にデータの編集や新規データの追加ができない制限がある既存のDBとは異なり、劔はDBの分散化を前提とし、ほとんどすべての構成要素を従来とは異なる方針で設計・実装することによって、世界最高レベルの性能を実現することに成功したとする。
劔は、大きく分けてつのコンポーネントで構成され、従来のRDBと同様のSQL実行インタフェースに加えて、目的別に最適なインタフェースを選択することが可能な設計となっている。
それぞれのコンポーネントについて独自の設計などが加えられており、ジョブスケジューラ、SQL実行エンジン、トランザクションエンジンが相互に連携して分散処理をすることで、データの記録や処理を高速に実施できるという。
各コンポーネントの役割
- アプリケーション基盤「Tateyama」:劔内部のサービスのライフサイクルを管理
- SQL実行エンジン「Mizugaki」:SQLから分散処理用の実行計画を生成
- トランザクションエンジン「Shirakami」:一貫性を担保するための並行性制御を高速に行う
- ログデータストア「Limestone」:非同期での先行ログ書き込みを並列で行う