大質量ブラックホールからの光は本来微小な領域から放射されているが、望遠鏡で得られた画像上では複数の画素にわたって広がって観測される。その光をクェーサーの画像上から差し引くために、研究チームは、ブラックホールと同様にコンパクトな星を利用したとする。ターゲットのクェーサー周囲に映った星の画像を使って微小領域からの光の広がり方をモデル化し、それを差し引くことで空間的に広がった親銀河の光の成分のみが抽出可能になったとしている。
2つの波長での親銀河の明るさの情報から、HSCJ2255+0251の銀河の質量は太陽の340億倍、HSCJ2236+0032の銀河の質量は1300億倍と推定された。これは同時代の銀河の中でも最も重たい部類だという。
さらに、JWSTの近赤外分光装置「NIRSpec」で大質量ブラックホール周囲を高速で回転する物質の運動を調査したところ、両大質量ブラックホールは、質量が太陽の2億倍と14億倍と求められた。これらの観測結果は、銀河と大質量ブラックホールの関係が近傍宇宙と初期宇宙で大きく変わらないことが示されているとする。
研究チームは、今後予定されているJWSTのサイクル1の観測データを利用し、より多くのクェーサーで今回と同様の研究を継続する予定とのこと。そして、銀河と大質量ブラックホールのどちらが先に成長したのかという問題の解決に挑むとしている。
さらに研究チームには、JWSTの観測時間として、今秋開始のサイクル2でも割り当てられることが決定しているという。そこでは、クェーサーHSCJ2236+0032の親銀河がどのような星で構成されているのか、さらに同クェーサーの周りに銀河がどれくらい群れているのか、といったより詳細な調査を行う計画とした。
それに加え、アルマ望遠鏡を使った親銀河中のガスと塵の観測も現在進行中だといい、今後の研究の進展により、大質量ブラックホールの形成過程の謎や親銀河との関係性や進化の過程に迫ることが大いに期待されるとしている。