さらに同センサでは、高速化・小型化のためにMEMS技術が採用されている。さまざまなMEMSデバイスを一括で形成することが可能な独自のMEMS製造プラットフォーム技術を開発し、感度の異なる複数個の超小型熱伝導型ガスセンサを1つの基板上に形成することで、高速化・小型化を実現したとしている。
そして、実際にMEMS技術を用いて複数の熱伝導型ガスセンサを搭載したモジュールを一括形成し、個片化した各ガスセンサとガス導入用ノズルおよび専用の回路を実装したプロトタイプを作成したとのこと。プロトタイプは、現在ガスの濃度測定に用いられているガスクロマトグラフィの平均サイズ(約2万2740cm3)と比較して、1/200以下のモジュールサイズ(約106cm3)を実現したとする。
その後東芝は実環境として、CO2を電気分解するセルへプロトタイプを取り付け、加湿状態のCO2、H2、COの3種類の混合ガスから、それぞれのガス濃度を同時に測定する実験を実施。その結果、測定時間は1.7秒となり、従来のガスクロマトグラフィーの約5分と比べて150倍以上もの速さで、3種類のガス濃度それぞれを測定できることを実証したとしている。
同社によると、今回得られた知見をベースにセンサの構造やアルゴリズムの最適化を行い、さらなる実証実験などを通じて、2026年を目途に今回の技術の実用化を目指すという。
そして今回の技術により、混合ガスにおける各ガス濃度のリアルタイムモニタリングを実現し、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、CO2資源化技術の高効率化や信頼性の高いカーボンフットプリントのデータ取得に貢献していくとした。また、今回の技術を単体ガスのセンシングに応用し、水素漏洩の検知や屋内空気質のモニタリング、呼気水素による腸内環境のモニタリングなどにも貢献するとしている。