東芝は6月26日、二酸化炭素(CO2)や水素(H2)、一酸化炭素(CO)などのガスを3種類以上含む混合ガスであっても、実環境でそれぞれのガス濃度を同時かつ高速に測定できる、従来のガスクロマトグラフィーと比較してサイズが1/200以下の小型センシング技術を開発したと発表した。
詳細は、6月25日から29日まで京都で開催されているMEMS分野の国際会議「TRANSDUCERS 2023」にて、6月28日に口頭発表される予定だ。
CO2を価値あるガス資源に変換するCO2資源化技術には、CO2を分解し化学品などに再生する「Power to Chemicals」(P2C)や、CO2とH2から天然ガスの主成分であるメタンを合成する「メタネーション」などの技術がある。これらは、CO2を電気化学反応により分解したり、別のガスと反応させたりすることで資源化を行う。ただし高効率に資源化するには、反応中のガスの成分や濃度をリアルタイムでモニタリングしながら、ガスの反応条件を最適な状態に制御することが重要だが、現在のガスクロマトグラフィーでは不可能だったという。
また、信頼性の高いカーボンフットプリントの実現に向けては、各温室効果ガスの濃度を測定し、正確に可視化する必要がある。しかし、実環境でガスが反応する過程においては、CO2や生成された資源ガス以外に、副生成物の別のガスや水蒸気も発生するため、複数種類のガスが混ざり合った混合ガスの測定が必要となる。CO2の高効率での資源化、あるいは温室効果ガス濃度の正確な把握を実現するには、混合ガスにおけるそれぞれの成分や濃度をリアルタイムで正確に測定することが求められている。
これらのニーズを受けて、ガス濃度測定を高速化・小型化する技術として、ガスセンサの開発が世界的に進められており、主に「酸化物半導体型」、「接触燃焼型」、「熱伝導型」の3種類が存在する。ただしCO2の資源化では、生成ガスにCOのような被毒性の高いガスが含まれることが多いため、この3種類の中では、ガス反応膜を用いない熱伝導型が耐性の面から有効だとされている。
熱伝導型での濃度測定は、ガスの種類によって熱伝導性が異なることを利用して行われる。しかし、計測対象に3種類以上のガスが含まれていると、どのガスによって熱が奪われたのかを判定できず、濃度を算出できないという大きな課題が残されていた。その課題を解決するため、東芝は今回、感度の異なる複数の熱伝導型を採用したという。
新開発のセンサは、感度の異なる複数の熱導電型センサそれぞれの検出値をアルゴリズム処理し、各ガス濃度の測定値として出力することで、どのガスによって熱が奪われたのかを判定する仕組みだ。これにより、被毒性の高いガスへの耐性と3種類以上含む混合ガスの各濃度を測定するという、これまで両立が困難だった技術が実現した。なお、熱伝導型ガスセンサの種類を増やすことで、測定するガスの種類を増やすことも可能とする。