同計画で最初に観測された領域は、非常に高輝度であることで有名なクェーサー「J0100+2802」の方向だ。同領域において、赤方偏移5.3<z<6.9の範囲で117個の銀河について分光学的に同定することに成功したという。そして、この銀河サンプルとクェーサースペクトルから、銀河間ガスの平均透過率が銀河からの距離によってどのように変化するかを測定したという。
その結果、宇宙が部分的にしか電離されていない宇宙年齢9.5億年ごろ(赤方偏移5.9付近)では、銀河の周りに半径250万光年程度の、泡状の透過率の高い電離領域を形成していることが示された。そして、この時代からさらに1億年ほど経過すると(赤方偏移5.5付近)、個々の電離領域が広がり重なり合うことで宇宙全体が電離されることが示されたとする。
このように遠方の(古い)銀河になるほどLyα光の透過が少なくなるのは、再電離前の中性水素ガスの量が増えるためだとしている。そして、赤方偏移5.9付近の透過領域が、およそ250万光年以内にある銀河からの電離放射の局所的な影響によって生成されていることを示しているとする。また宇宙再電離を引き起こしたのはこの時代の一般的な銀河であり、希少なクェーサーや、崩壊粒子などのようなエキゾチックな可能性ではないことを強く示しているとした。
これら銀河の性質については「EIGER II」(今回の論文は「EIGER I」)で詳しく分析され、特に重要な性質として、重元素の濃度が低く電離光子の生成効率が高いことが明らかになったとする。これらの性質は、このような初期には、一般に銀河はまだガスが豊富で、超新星爆発で大量の重元素を生成する時間がなかったことを反映しており、電離光子の生成効率が高いため、若い銀河は宇宙を再電離するのに非常に有効な源となるとしている。
なおこのような銀河の性質は、現在の宇宙では1%程度しか見られないが、宇宙年齢が10億年のころにはそれが一般的であり、銀河の性質が宇宙時間においていかに強く進化しているかを物語っているという。
EIGER計画は、宇宙再電離中期から後期にかけての描像の確立を目指しており、同計画から得られる知見は、2030年代以降に実現を目指している中性水素21cm線観測による宇宙再電離初期および暗黒時代の観測的研究のための土台を提供するとする。そして今回の研究成果は、宇宙史を切れ目なく理解するという究極的な目標における重要な一歩となるとした。