京都大学(京大)、金沢大学(金大)、東北大学の3者は6月13日、GNSSデータの統合地殻変動解析により、石川県能登半島の北東部で発生している群発地震は、大量の流体(約2900万m3)が深さ16km程度まで上昇して地下の断層帯内を拡散したことにより、断層帯でのスロースリップが誘発され、さらに断層帯浅部での地震活動も誘発されたことが原因と考えられることを示したと共同で発表した。

  • 能登半島の群発地震のメカニズムの模式図。GNSSデータの解析から、地殻深部の流体が断層帯内を拡散することにより断層帯の膨張とスロースリップを引き起こし、さらにその浅部で活発な地震活動を長期にわたって引き起こしていることが示唆される。

    能登半島の群発地震のメカニズムの模式図。GNSSデータの解析から、地殻深部の流体が断層帯内を拡散することにより断層帯の膨張とスロースリップを引き起こし、さらにその浅部で活発な地震活動を長期にわたって引き起こしていることが示唆される。(出所:京大プレスリリースPDF)

同成果は、京大 防災研究所の西村卓也教授、金大 理工研究域 地球社会基盤学系の平松良浩教授、東北大大学院 理学研究科の太田雄策准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

能登半島北東部では、2020年12月ごろから地震活動が活発化しており、2023年5月5日にはマグニチュード6.5(最大震度6強)の地震が発生。石川県珠洲市などで大きな被害が発生している。しかし、なぜこのような活発な地震活動が2年半以上もの長期にわたって継続しているのか、その仕組みはまだ解明されていない。

そうした中で、地震活動の活発化と同期して、国土地理院による日本全国約1300点のGNSS観測点(電子基準点)のうち、能登半島北東部に設置された観測点では、それまでと傾向の異なる地殻変動が観測されたとする。しかし、群発地震震源域周辺の観測点数は限られるため、地殻変動の全体像は明らかになっていなかった。

そこで着目されたのが、ソフトバンクが日本全国3300か所以上に独自で整備しているGNSS観測点(ソフトバンク独自基準点)だ。同基準点は能登半島にも多数設置されているため、従来の電子基準点と併用することで、地殻変動の詳細な時空間分布を明らかにできる可能性があるという。

そこで今回の研究では、電子基準点とソフトバンク独自基準点、さらに京大および金大が地震活動活発化後に設置した臨時GNSS観測点のデータを解析したとする。その結果、2020年11月から2022年12月までの期間に、最大で約7cmの隆起と、群発地震の震源域を中心とする膨張を示すような水平変動があったことが確認された。