次に、被験者ごとに歯列を歯ブラシで刷掃し、刷掃後の歯ブラシを生理食塩水に浸漬し、超音波にて付着細菌を回収。その細菌懸濁液に、オゾン・ナノ水もしくは蒸留水を加え、その後に寒天培地に滴下し、一晩培養した。その結果、オゾン・ナノ水添加では、蒸留水添加と比べ、細菌が有意に減少したことがわかった。
さらに、緑膿菌に関する実験も行われた。同菌は、水道などの水廻りを好んで生育し、院内感染などを引き起こすが、抗生物質が効きにくく、感染すると治療が困難になる厄介な菌である。今回は培養された同菌に対し、オゾン・ナノ水もしくは蒸留水を加え、その後に寒天培地に滴下し一晩培養された。その結果、この実験でもオゾン・ナノ水添加が蒸留水添加と比べて緑膿菌が有意に減少することが明らかにされた。
オゾンは自然環境下で酸素に分解されるため、環境負荷が低いという利点を持つ。さらに、オゾン・ナノ水は空気由来のオゾンと水のみを原料とするため、小型の生成装置を一度導入すれば、低コストで長期的・大量に生産可能となる。そのため、新型コロナウイルス感染拡大時に発生した、エタノール買い占めなどによる消毒液の問題に対する解決策になり得るという。
また医療の場では、病院スタッフの手指や医療機器の消毒に活用でき、安全で安心な院内感染対策につなげられることが考えられるとする。介護施設などの集団生活の場では、入所者それぞれの歯ブラシや持ち物を安心安全に消毒することにも使用可能だ。また、食品を扱う調理場や病院・介護施設などの水回りに繁殖する病原細菌に対しても、消毒液として使用できる将来性も有するとしている。
さらには、トウモロコシや木材などを原料とするバイオエタノールとは異なり、途上国の食や地球環境への弊害も無く、安価に大量製造が可能であり、SDGsの観点からも国際的な貢献ができる可能性も有するとした。