新潟大学(新大)は4月19日、空気から生成したオゾンをナノバブル技術で水中に長時間溶け込ませることにより、安全安心かつ安価な消毒液「オゾン・ナノ水」を開発し、その殺菌効果を確認したと発表した。
同成果は、新大大学院 医歯学総合研究科 微生物感染症学分野の滝澤史雄歯科医師(同・大学院 大学院生/新大フェローシップ生)、同・土門久哲准教授、同・寺尾豊教授、同・大学 歯学部の清水香奈学部生、同・大学 工学部の牛田晃臣准教授、フューテックニイガタの樋渡忠氏らの共同研究チームによるもの。詳細は、米オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
新型コロナウイルスの流行により、消毒液の供給不足、購入費による家計の圧迫、そして使用済み液の排出による環境悪化への懸念など、各種課題が生じている。またニーズが高まっている最も一般的なエタノール消毒液は、アレルギーの問題のほか、製造段階におけるコストや材料調達などの問題もある。素材の1つであるバイオエタノールは、トウモロコシや木材などから合成されており、その材料を確保するため、途上国の食料供給の悪化や熱帯雨林の環境破壊が引き起こされている。
そこで研究チームは今回、エタノールなどの化学薬品を用いた既存消毒液に替わる、水と空気ベースの「安全かつ安心、そしてSDGsな国産消毒液」の開発を目指したという。
酸素原子3個で構成されるオゾンは空気から生成でき、各種微生物に消毒活性を示す。しかし、通常の方法で水に溶解させたオゾンは、すぐに気泡として水面へ浮上し、空気中で酸素へと分解される欠点を持ち、消毒液には適していない。そこで、気体を約100nmの気泡にしてから水に溶解させるナノバブル技術に着目したとする。
ナノバブルは、浮力が誤差程度でしか生じないため、水面へ浮上することなく溶液中に維持される。つまり、長時間水に溶け続けることが特徴だ。今回の研究では、オゾンをナノバブルの状態で水に溶解させる装置を開発し、24時間以上、消毒効果のあるオゾン濃度が水中で維持される消毒液(オゾン・ナノ水)を生成したとする。そして、食品加工や調理の場、介護施設や病院で病原性を発揮する各種細菌に対し、オゾン・ナノ水の消毒効果を、人体に悪影響の無い条件下で調べたという。
まず、同一被験者の左手をオゾン・ナノ水で洗浄し、右手を蒸留水で洗浄後、自然乾燥させた左手および右手を寒天培地に圧接し、一晩培養した。その結果、オゾン・ナノ水洗浄では、蒸留水洗浄と比べて手指の細菌が有意に減少することが確認された。