ニュートン流体の乱流では、エネルギーは渦のカスケード(連鎖)により大きなスケールから小さなスケールへと伝わる。これらのスケールにまたがるエネルギー分布は、エネルギースペクトルを用いて定量化することが可能だ。そして水などのニュートン流体では、コルモゴロフの理論に従い、スケーリング指数は-5/3となる。この値は、これまでの多くの実験やシミュレーションで実証され、確立されている。

そして今回の研究により、弾粘塑性流体については、その塑性効果によって乱流の振る舞いが変化し、-2.3という新たなスケーリング指数になることが発見された。これは、ニュートン流体の乱流に関する従来の知識とは異なるエネルギー伝達メカニズムであることが示されているという。

この発見を受けて、研究チームは新しいメカニズムの解明に取り組むことにしたとする。シミュレーションデータの解析をさらに進めた結果、弾粘塑性流体はコルモゴロフの理論に従わず、フラクタル(すべてのスケールで非正規性を持つ幾何学的な形状)のようなエネルギー散逸パターンを示すことが解明された。より具体的にいえば、弾粘塑性流体の乱流のエネルギー散逸は、多重フラクタル、つまり、スケールによって非正規性の度合いが異なることを意味しているとする。

研究チームはさらに、ニュートン流体の乱流と弾粘塑性流体の乱流には、「間欠性」というもう1つ重要な違いがあり、弾粘塑性流体の間欠性がより高いことが確認されたという。間欠性は、局所的に流れが速くなったり、エネルギー散逸が大きくなったりするなど、極端な事象が発生する可能性に関わる性質だ。弾粘塑性流体の乱流は、土砂災害や火山噴火などの自然災害でも発生するため、この発見は災害の予測や対策において特に重要であるといえるとしている。

また今回の研究成果は、ポリマー製造、コンクリート圧送、泥水掘削、石油生産など、幅広い産業における製造工程の設計や最適化に活用することが期待されるという。さらに今回の成果は、非ニュートン流体の乱流の一般的な振る舞いを、より包括的に理解することに貢献するとし、これによって可塑性が高い流体の流れをより適切にモデル化できるようになる可能性があるとする。また、医薬品、食品加工、エネルギーなど、さまざまな産業に非常に大きな影響をもたらす可能性も秘めているとした。