沖縄科学技術大学院大学(OIST)は4月14日、泥やコンクリート、溶岩といった、流れる速度によって粘性が変わる非ニュートン流体の「弾粘塑性(だんねんそせい)流体」について、そのエネルギーが散逸する過程を3Dシミュレーションを用いて解明したことを発表した。
同成果は、OIST 複雑流体・流動ユニットのモハメド・アブデルガワード大学院生、同・ヤント・キャノン大学院生、同・マルコ・エドアルド・ロスティ准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の物理学全般を扱う学術誌「Nature Physics」に掲載された。
弾粘塑性流体は、外から受ける応力の加減によって固体のようにも液体のようにも振る舞う「非ニュートン流体」の一種だ。同流体は受ける力の大きさによって粘性が変化し、低い応力では形状を保ち変形しにくく、高い応力がかかると液体のように流動する。こういった非ニュートン流体は、水や油、空気といった、どのようなせん断速度(流れる速度)であってもその粘度が一定の「ニュートン流体」と比べ、より複雑な動きを示すのが特徴だ。
粘性はものづくりにおける製造工程の効率に大きな影響を及ぼすため、弾粘塑性流体が乱流時にどのように振る舞うかを解明することには重要な意味があるという。乱流は、非常に速い速度の流体に見られ、本質的に予測不可能でカオス的な状態を指す。しかし、乱流の特徴の一部はこれまでにモデル化され、理論的に説明することが可能だという。
流体のエネルギースペクトル(分布)にべき乗則スケーリングを適用することで、ニュートン流体の乱流のエネルギーが大きなスケールの渦から小さなスケールの渦へどのように伝達されるかを説明した理論が、1941年にアンドレイ・N・コルモゴロフによって提唱された(以下「コルモゴロフの理論」)。しかし、弾粘塑性流体の乱流の振る舞いについては、この理論が成立するかどうかも含め、あまり解明されていないという。
そこで研究チームは今回、弾粘塑性流体における均質で等方的な乱流の3D数値シミュレーションを行い、異なるスケールにまたがるエネルギー移動のメカニズムについて、詳細な解析を行ったとする。