そこで研究チームは今回、ユーグレナとカギケノリの混合物を飼料と部分的に置き換え、家畜の健康とメタン排出量軽減との両方に配慮した飼料の可能性を検討したとする。
今回の研究では、(1)カギケノリを1%添加した飼料、(2)一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料、(3)カギケノリを1%添加し、一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料、の3つが作成された。そして、牛から採取された胃液に浸した後で発生するガスの成分変化を観察することで、メタン発生量への影響などの評価が行われた。
その結果、通常飼料と比較して、(1)では胃から出るメタンの量が21%減少することが確認され、(2)では4%(ユーグレナ10%)、11%(同25%)減少することが確かめられた。そして(3)では29.9%(カギケノリ1%、ユーグレナ10%)と40.0%(カギケノリ1%、ユーグレナ25%)と、メタンの量が有意に減少することも明らかにされたという。
また、4つの胃を持つことで知られる反芻家畜にとって、その主要なエネルギー源は第一胃内で産生されるVFAで、その組成は飼料からの影響を受けることが知られていた。そこで次に、(4)カギケノリを添加(1%、2.5%)した飼料、(5)一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料、(6)カギケノリを1%添加し、一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料、(7)カギケノリを2.5%添加し、一部(10%、25%)をユーグレナに代替した飼料の4つが作製された。そして、胃液に各配合飼料を添加した際の揮発性脂肪酸を測定し、牛への健康影響の評価が実施された。
その結果、VFAの減少は、(7)の25%ユーグレナに代替したものにて有意に確認され、それ以外の条件では、牛への悪影響はほとんどないことが明らかになったという。
研究チームは今回の研究成果について、反芻動物の飼料において、カギケノリを1%添加しユーグレナを25%まで配合した組み合わせが、牛の健康に悪影響を及ぼさず、それでいてメタン排出量軽減に寄与するという、新たな代替飼料の原料としての可能性が示されたとする。また今後、ユーグレナの飼料としてのさらなる安全性を確保すると同時に、飼料として活用した際の付加価値の向上などに関する研究を推進し、飼料利用の事業化を目指すとしている。