宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月6日、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟にてJAXAが運用している全天X線監視装置「MAXI」(マキシ)が、数千年に1度と考えられるピーク強度を持つ、史上最強のガンマ線バースト「GRB 221009A」からのX線残光の初期観測に成功したことを発表した。
同成果は、理化学研究所、JAXA、日本大学、青山学院大学、愛媛大学、東京工業大学、京都大学、宮崎大学、中央大学、千葉大学などの研究者が参加するMAXIチーム、米国航空宇宙局(NASA)が運用するガンマ線バースト観測衛星スウィフトチーム、同じくNASAがISSに取り付けて装備しているX線望遠鏡NICERチームなど、全36機関の研究者による国際共同研究チームによるもの。GRB 221009Aに関する論文は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に合計10本以上が掲載された。
2022年10月9日の日本時間22時58分、MAXIは全天で2番目に明るくなった突発X線天体を、や(矢)座に発見。その12分後には、NASAのガンマ線バースト観測衛星のスウィフトでも同天体が検出された(発見時ISSと地上の通信が不可の状況だったため、報告自体はスウィフトの方が先)。その後、それに先立つ同日22時16分に、同天体付近でこれまで検出された中で最も明るいガンマ線バーストが発生したことが、NASAのガンマ線観測衛星フェルミの観測チームから報告されたという。
これらの報告を受け、世界中の天文台の望遠鏡や観測装置がGRB 221009Aの観測を開始した。その結果、ピーク強度が1万Crab以上という観測史上最大のガンマ線バーストだったことが判明したとする。MAXIが受けたのはそのX線残光で、しかもGRB 221009AのX線残光の初期の観測となった。
なお、ISS上の2つのX線望遠鏡MAXIとNICERは、国際連携観測プログラム「OHMAN」により、2022年10月よりリアルタイム自動追跡観測を実施中だ。広域の全天観測装置であるMAXIがとらえると、ISS上で即座に情報が伝えられ、NICERが狭域詳細観測を開始する仕組みだが、発見時は残念ながらNICERを向けられない位置だと判明したため、即時観測は断念されたという。
またCrabという単位は、カニパルサーを含むカニ星雲のX線強度を基準としたX線やガンマ線天文学で用いられる明るさの単位だ。これまでで最も明るい天体は、太陽以外で最初に発見されたX線源さそり座X-1で、約20Crab。今回観測されたGRB 221009Aは、そのおよそ500倍という桁違いの明るさである。19億光年(赤方偏移0.151)も離れているにもかかわらず、ガンマ線バースト本体は静穏時の太陽と同じ程度のX線強度だったということから、どれほど強力だったのかがわかる。その発生頻度を、これまでに検出されたガンマ線バーストの明るさと距離の分布などから見積もったところ、数千年に1度の現象であることがわかった。