そして今回の技術の実証として、WiGigを用い、2022年12月7日・8日に鈴鹿サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同テスト/ルーキーテストにおいて実験を実施。NTTドコモがスポンサードする「DOCOMO TEAM DANDELION RACING」のフォーミュラカー「SF23」が超高速移動環境を再現した。

WiGig端末はSF23の両サイドポッドに搭載され、WiGig基地局は、最高速度の時速250km以上が出るメインストレートのコース両サイドにそれぞれ3台ずつ設置された。2020年度、2021年度の実験で実証された基地局切り替え技術と端末主導サイトダイバーシティ技術は、今回の実験でもそのまま適用されたという。

  • (左)高速道路や鉄道などで無線基地局の間欠動作制御を行った場合のイメージ。(右)実証実験の実験系

    (左)高速道路や鉄道などで無線基地局の間欠動作制御を行った場合のイメージ。(右)実証実験の実験系(出所:NTT Webサイト)

この実証実験では、基地局#1と#2をエリア入口の基地局とみなして常時アクティブ状態とし、基地局#3~#6に対して今回の技術の間欠動作制御が適用された。また同実験は、今回の技術における基地局のアクティブ/スリープ状態の切り替え制御の無線端末追従性を検証目的として、1台のみで実施された。

そして、SF23の1周あたりの基地局#1~#6と基地局#3~#6の総アクティブ時間を測定するとともに、同時にWiGig端末からデータを転送し、SF23の1周あたりの全WiGig基地局が受信するレイヤ2での総転送データ量が測定された。これにより、今回の技術適用時の無線伝送性能と低消費電力化効果の評価が同時に行われた。

その結果、今回の技術が適用されない場合(基地局#1~#6を常時アクティブ)を(a)、適用した場合を(b)とした場合、総転送データ量は(a)が1031Mbで、(b)も1077Mbであり、今回の技術を適用しても無線伝送性能が維持できていることが確認されたとする。

一方、基地局#1~#6、#3~#6の総アクティブ時間は、(a)の場合、SF23の1周の走行時間がおよそ100秒であることからそれぞれ600秒と400秒であるのに対して、(b)の場合、それぞれ248秒と48秒と、大幅に抑えられたという。NTTはこれにより、今回用いたWiGig基地局の1秒あたりの消費電力量を、#1~#6では150Wsから114.8Wsへ、#3~#6では100Wsから64.8Wsへと削減できたとした。

  • (左)通信電波による無線端末測位に基づく無線基地局の間欠動作制御技術。(中央・右)実験結果(無線基地局の総転送データ量と総アクティブ時間)

    (左)通信電波による無線端末測位に基づく無線基地局の間欠動作制御技術。(中央・右)実験結果(無線基地局の総転送データ量と総アクティブ時間)(出所:NTT Webサイト)

NTTは今後、ミリ波・テラヘルツ波帯無線伝送システムへの適用検討も進めると同時に、無線基地局のアクティブ/スリープ状態、その切り替え時の消費電力と切り替え頻度を考慮した総合的な低消費電力化の検討、ならびにさまざまな利用環境で安定した無線伝送と低消費電力化の両立を実現するための技術検討を推進するとしている。