NTTは3月31日、通信電波による無線端末測位を活用した無線基地局の間欠動作制御技術を考案し、60GHz帯無線LAN(WiGig)と、最高時速250km以上のフォーミュラカーを用いて、実証したことを発表した。

無線通信のさらなる高速大容量化のため、ミリ波・サブテラヘルツ波などの高周波数帯の活用が期待されている。その一方で、ネットワークの低消費電力化も重要な課題だ。高周波数帯を使う無線通信では、1つの基地局によるカバーエリアが狭くなるため、端末の分布状況によっては、端末と接続していない基地局が存在することがあるという。つまり、そうした基地局をスリープ状態に切り替えることで消費電力を削減すれば、ネットワーク全体を低消費電力化できる可能性がある。

このようなユースケースとして、高速道路や鉄道などが考えられるという。道路沿いや線路沿いに高周波数帯無線基地局を高密度に展開した場合、無線端末の対象となる車や列車の走行がまばらであれば、端末が不在となる基地局が多数存在する。そこで、車や列車の走行に合わせて、基地局のアクティブとスリープの状態を適応的に切り替えて制御できれば、無線システム全体の低消費電力化が期待できるとする。

こうした間欠制御として、アクティブとスリープを一定の時間によって切り替えることなどが考えられてきたが、時間的制限があり、自由度の高い制御は実現されていない。そこで今回は、高周波数帯無線通信が持つアンテナ指向性や信号広帯域性に着目。通信電波自体で無線端末測位を行い、取得した端末の測位情報に基づいて、基地局の間欠動作制御を行う手法を考案することにしたという。

各基地局における具体的な状態の切り替え方法として、以下の3つが提案された。

  1. 高速道路や鉄道など対象エリアが閉じている場合、そのエリア入口の基地局は常時アクティブ、そのほかの基地局はスリープとする
  2. 端末と接続した基地局の通信電波を用いて、端末の測位を行う
  3. その測位情報に基づき、端末が隣接の基地局エリア内に入りそうだと判断される場合、その隣接基地局もアクティブにする
  4. 端末の接続が隣接以降の基地局へ切り替わった場合、その基地局の通信電波を用いて端末測位を行い、その情報に基づいて端末が元の基地局エリア内に戻りそうにないと判断した場合、その基地局をスリープにする

NTTは今回の技術により、車や鉄道などの通過タイミングに応じて、柔軟に無線基地局を間欠動作することが可能となるとした。