Appleシリコン搭載のMac
現在Appleから販売されているMacには、主にAppleが独自に設計したプロセッサが搭載されている。このプロセッサは「Appleシリコン」と呼ばれている。AppleシリコンはARMをベースとしたプロセッサであり、高いパフォーマンスを実現しつつも優れた省電力性を実現しているという特徴がある。
Appleが提供しているオペレーティングシステムやアプリケーションはこの新しいプロセッサにネイティブに対応している。また、これまでのIntelプロセッサ向けに提供されていたサードパーティ製アプリケーションに関しては、Rosetta 2を用いることで動作するようになっており、ユーザーはほぼその違いを気にすることなく利用できる。
この新しいプロセッサはAppleがiPhoneやiPadで培ってきた技術であり、MacでiPhoneやiPadのアプリケーションも実行できるようになった。高性能、省電力、高互換性、iPhone/iPadアプリにも対応しており、メリットが多い。
MacでWindowsが使えなくなった
困ったのはMacでWindowsを使っていたユーザーだ。StatCounterの調査によれば、2023年2月のデスクトップにおけるMacのシェアは16%ほどだ。一方、Windowsは72%ほど占めている。特にビジネスシーンではWindowsが使われるケースが多く、Windowsを持っていないと対処が難しいケースがいくつかある。
以前のMacは仮想マシンアプリケーションでWindowsを実行することができた。Macにおける仮想マシンアプリケーションとしてはParallels DesktopやVMware Fusionが有名だ。Macを使っていてWindowsが必要になったら、仮想マシンでWindowsを実行すれば対応することができた。
しかし、Appleシリコンが搭載されたMacからはこれが難しくなってしまった。Appleは今後MacにAppleシリコンを搭載していくため、このままではMacの仮想マシンでWindowsを実行するという従来の方法が利用できない状況が続く可能性が出ていた。
Appleシリコンと仮想マシン
問題は、AppleシリコンがARMをベースに設計されたプロセッサであり、Windowsパソコンが主に使っているIntelプロセッサと異なるアーキテクチャという点にある。Intelを搭載していた以前のMacであれば、仮想マシンでWindowsを使うことができた。MacもWindowsも同じIntelプロセッサに対応していたからだ。
しかし、AppleシリコンはIntelプロセッサとは異なるアーキテクチャであるため、Appleシリコンを搭載したMacでは従来のWindowsを利用できなくなってしまった。ソフトウェア的にMacでWindowsを実行する手段はあるが、こちらは速度が期待できないので実用性は低い。現実問題として、従来のWindowsを新しいMacで実行するのは現実的ではなくなった。
仮想マシンであるParallels DesktopやVMware Fusionを開発しているベンダーはこの状況に対して手を打たなかったわけではない。ベンダーは次の取り組みを開始し、対応を進めてきた。
- 仮想マシン自体をAppleシリコン搭載のMacに対応させる
- ARM版のWindowsを仮想マシンのゲストとして利用できるようにする
メインストリームではないが、MicrosoftはARM版のWindowsも開発している。このARM版のWindowsであれば、仕組み上はAppleシリコン搭載Macでも実用的な速度で利用できる。Intel版のWindowsをAppleシリコン搭載Macで実行することは現実的ではないが、ARM版Windowsなら行けるだろうとの判断だ。
Parallels Desktop 18 for Mac
そして2023年2月16日(米国時間)、マイルストーンがやってきた。Microsoftが「Parallels Desktop 18 for Mac」を「Windows 11 Pro (ARM版)」および「Windows 11 Enterprise (ARM版)」に正式対応したソリューションとして認定したのだ(参考「Parallels Desktop for Mac: The Solution for Running Windows 11 on Apple M-series Macs」)。
実質、Parallels DesktopやVMware FusionでARM版Windows 11が動作するようになっていたが、Microsoftが正式に対応を認めたことは大きい。これによってAppleシリコン搭載Macユーザーにも、MacでWindowsを実行する道が正式に開かれたことになる。
VMware Fusionに関してはまだ発表は行われていないが、近い将来同様の措置が取られるものとみられる。