そして開発された試作品について、まずその物理学的な特性(引張強さ・破断時伸び・弾性率・分子量の測定など)について、既存製品との比較が行われた。すると、強さの点では劣るものの、伸展させると初期長のおよそ2倍の長さまで伸び、力を緩めると初期長近くまで戻ることが判明したとする。

続いて、試験管内およびラット生体内における分解試験を実施し、物理学的な特性の変化が確認された。その結果、生体内で16週間経過した縫合糸の強さは初期値の63%を維持しており、既存製品よりも緩やかに分解されることが明らかにされた。

次に、試作品の結び目の大きさや解けにくさ(結節安定性)の評価を行った結果、既存製品に比べて明らかに結び目は小さく、解けにくいことが確かめられた。

さらに、試作品の性能評価として、ブタの腹壁縫合試験が行われた。その際、縫合後7週の時点で縫合部の明らかな離開や感染は認められず、腹壁瘢痕ヘルニアは生じていなかったという。また縫合部周囲の腹壁組織に対するHE染色が行われたところ、既存製品に比べて炎症が小さいことが示唆されたとする。

これらの結果から、今回開発されたP(3HB-co-4HB)製の製品は、伸縮性や柔軟性、生体適合性に富んでおり、結び目が小さく解けにくいという利点と中長期的な生体吸収性を併せ持つ、革新的な縫合糸であるといえるとした。新製品は、既存の吸収性モノフィラメント縫合糸に代わる安全な手段であることに加え、広範囲に適応できる可能性があり、特に脆弱な柔らかい組織を縫合する際にその効果を発揮することが期待されるという。研究チームは将来的な見通しとして、形状を変化させることで、結紮(けっさつ)を必要としない糸を作ることも可能になるとした。

さらには、P(3HB-co-4HB)は縫合糸に限らず、人工靭帯や人工神経などの柔軟な組織の再建用デバイスへの応用も想定されており、医療機器への幅広い展開が期待されるとしている。