産業技術総合研究所(産総研)は2月16日、青色顔料のプルシアンブルーを改良し、メタノールを回収・濃縮できる新しい吸着材を開発したことを発表した。

同成果は、産総研 ナノ材料研究部門 ナノ粒子機能設計グループの首藤雄大研究員、同・川本徹首席研究員、同・髙橋顕主任研究員らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学学会が刊行する材料と界面プロセスを扱う学術誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載された。

塗装や化学産業などで必要不可欠な有機溶媒は、大気中に放出されると揮発性有機化合物として光化学スモッグやPM2.5の原因となってしまう。そのため、工場の廃ガス中から回収することができれば資源として利用可能だが、現状では燃やしてCO2へと分解されており、廃ガスに含まれる有機溶媒を分離回収し、再資源化する技術が求められていた。

しかし、廃ガスにも水蒸気が含まれている場合が多く、そのような状況下でメタノールを再資源化するためには、メタノールを高濃度に回収する必要があった。ところが、活性炭やゼオライトなどの吸着材では、水蒸気を含むガスから、メタノールのような親水性の有機溶媒を高濃度に吸着することが困難だったという。

そこで研究チームは、これまで産総研がアンモニアや放射性セシウムなど、有用物質または有害物質の吸着材料として開発してきた、プルシアンブルー類似体に着目することにしたとする。同類似体は多孔性配位高分子であり、金属イオンとシアノ基(CN)がジャングルジムのような構造を形成し、その内部空間にイオンや分子を吸着できることを特徴とする。今回の研究では、プルシアンブルーの結晶構造を最適化させることで、水蒸気が共存する条件下でもメタノールを吸着し、高濃度な液体として回収する吸着材の開発を目指すことにしたという。

そして、プルシアンブルー類似体のうち、マンガン(Mn)とコバルト(Co)がシアノ基で架橋された「Mn[Co(CN)6]2/3」(Mn-Coプルシアンブルー)が、水蒸気を含む大気中の希薄な気体のメタノールを吸着することを発見したとする。