研究チームによると、今回の最大の成果は、OMC-2内でFIR 3中の原始星から噴き出た巨大双極分子流が、複数の若い星が密集しているFIR 4に激しく衝突していることを示す決定的な証拠が捉えられたことだという。FIR 3からの巨大双極分子流がFIR 4と激しく衝突することで、その境界面で発生したと考えられるSiOガスが観測された。また巨大双極分子流が、FIR 4にある原始星の材料となる高密度ガスや塵と2か所で衝突した様子が、U字状の衝突面として明確に捉えられたとのことだ。
なお研究チームは、今回のように非常に若い星団で形成された原始星の双極分子流が、星団形成領域内のほかのメンバーに衝突している証拠がはっきりと撮像されたのは、今回が初めてだとしている。
また、巨大双極分子流がFIR 4に向かって進む途中、フィラメント状に広がる分子雲とも激しく衝突し、分子流内のガスが激しく圧縮されている様子もわかった。双極分子流と激しく衝突したことで、分子雲内の塵が加熱されている証拠も捉えられたとする。さらに、その圧縮された分子雲内で分子雲コアの起源となりうる分裂片も多数が発見された。
一方、今回の研究では、星団形成領域内での巨大双極分子流と若い星たちの衝突をきっかけとして星団内の星形成が誘発されたのか、あるいは衝突前に星が誕生していたのかについては、明確に区別できなかったという。とはいえ今回の結果から、双極分子流の衝突によって星団形成領域内のガスや塵が揺さぶられ、星が生まれる環境がかき乱されている可能性が示されたとした。
今後、アルマ望遠鏡を用いたさらなる高解像度観測によって、双極分子流の影響で圧縮されたガスの運動を調べ、星団形成領域内への物質の流入、もしくは分子雲コアの破壊を捉えることができれば、FIR 4がどのような進化をたどり、最終的にどれくらい重たい星を形成するのかを予測できる可能性があるという。そして、今回の研究のさらなる発展は、一般的な星形成の形態である星団形成の理解を紐解く鍵となるだろうとした。