九州大学(九大)と国立天文台(NAOJ)の両者は2月3日、アルマ望遠鏡を用いて最も若い「星団形成」領域の1つである「OMC-2」内の「FIR 3」および「FIR 4」領域を観測し、星間ガスや塵などからなる「分子雲」や、星のゆりかごといわれる「分子雲コア」にある、塵や一酸化炭素(CO)、一酸化ケイ素(SiO)の分布を調査。その結果、これまで報告されている数の2倍の「双極分子流」を発見し、複雑な星団形成環境の様子を捉えることに成功したと共同で発表した。

さらに、塵とCOとSiOの分布関係から、OMC-2内でFIR 3領域中の原始星から噴き出た巨大分子流が、若い星が密集するFIR 4領域に激しく衝突していることを示す決定的な証拠が得られたことも併せて発表された。

  • 星団形成領域OMC-2/ FIR 3およびFIR 4の想像図。アルマ望遠鏡によって、原始星が集団で生まれている星のゆりかご内部の詳細が明らかとなった

    星団形成領域OMC-2/ FIR 3およびFIR 4の想像図。アルマ望遠鏡によって、原始星が集団で生まれている星のゆりかご内部の詳細が明らかとなった。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), A. Sato et al.(出所:アルマ望遠鏡日本語Webサイト)

同成果は、九大 理学府の佐藤亜紗子大学院生、九大大学院 理学研究院の町田正博准教授、NAOJ アルマプロジェクトの髙橋智子准教授、同・石井峻特任准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

宇宙に存在するほとんどの原始星は集団で誕生し、それは星団形成と呼ばれる。そうした星団形成の現場は、複数の原始星がそれぞれ巨大な双極分子流を噴き出すため、非常に複雑な状況となる。なお、双極分子流が周辺にある分子雲コアに衝突することで、局所的に星の形成が誘発されたり、逆に分子雲コア内の環境がかき乱されることで周辺の星の成長が邪魔されたりする可能性があることも予測されている。

そんな星団形成領域は比較的遠方にあり、さらに複数の原始星や双極分子流が混在した複雑な構造のため、それらを十分に見分けるには高い空間分解能が必要だ。そこで研究チームは今回、先行研究よりも3倍の感度を持つアルマ望遠鏡を使って、オリオン座の方向に地球から1400光年の距離にある「オリオンA分子雲」に含まれる、最も若い星団形成領域の1つであるOMC-2内のFIR 3およびFIR 4領域を観測することにしたという。

今回の研究ではOMC-2をカバーするような広視野観測が行われ、塵やCO、SiOの分布が調べられた。なおCOは、双極分子流や分子雲コアにおいて2番目に多く存在する分子で、強い電波を出しており、星が成長する様子を観測するために重要な分子の1つである。そしてSiOは激しい衝突現象があった時の証拠となる。塵の表面に付着しているケイ素が、分子流と周辺物質の激しい衝突などの場面で叩き出された結果、宇宙空間に浮遊する酸素と結びつくことで誕生するからである。

今回の観測により、FIR 3および同4において、従来の報告の2倍もの双極分子流、つまり原始星が形成されている直接的な証拠が発見されたという。これにより、複雑な星団形成環境の様子を鮮明に描き出すことに成功したとする。