理化学研究所(理研)は2月3日、過去20年以上にわたって発見されず、存在しないことが定説とされてきた、ショウジョウバエ(ハエ)の自死的な細胞死である「アポトーシス」を引き起こす遺伝子を発見し、「サヨナラ遺伝子」と命名したことを発表した。

  • ショウジョウバエの羽で発現させたサヨナラ遺伝子が引き起こしたアポトーシス(赤紫色の部分)

    ショウジョウバエの羽で発現させたサヨナラ遺伝子が引き起こしたアポトーシス(赤紫色の部分)(出所:理研Webサイト)

同成果は、理研 生命機能科学研究センタ ー動的恒常性研究チームのユ・サガン チームリーダー(理研 開拓研究本部 Yoo生理遺伝学研究室 主任研究員兼任)、同・池川優子大学院生リサーチ・アソシエイト(京都大学大学院 生命科学研究科)を中心に、海外の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、分子/細胞生物学に関する全般を扱う学術誌「The EMBO Journal」に掲載された。

動物細胞が有する、組織の維持・形成、細胞のがん化などを防ぐ仕組みである「細胞死」の一種に、細胞の自殺といわれる「アポトーシス」がある。これが正常に機能しなければ、個体は健康に生きていけないほど重要である。動物細胞において、細胞外からのストレスを感知して、細胞にこのアポトーシスを引き起こすという重要な役割を担っているのが、アポトーシス関連因子をコードする遺伝子である「BH3オンリータンパク質」だ。

これまでの研究から、線虫・ハエ・哺乳類ではアポトーシスの起こる仕組みが基本的に似ていることがわかっており、20年以上前にBH3オンリータンパク質と同タイプの遺伝子が、線虫と哺乳類では発見されていた。しかし、ハエにおいては現在に至るまで発見されていなかったため、同タンパク質がハエには存在しないとされていた上、ハエを含む昆虫は線虫や哺乳類とは異なるアポトーシスの仕組みが独自に進化した可能性すら議論されてきたという。そこで研究チームは今回、この定説が本当に正しいのかを調べることにしたとする。