酸化物正極材料へ高速にマグネシウムを出し入れ可能にする方法として、まず酸化物粒子をナノ粒子化し、酸化物内部へのマグネシウム移動距離自体を減らすアプローチが有効だ。またそれと同時に、酸化物粒子を多孔質化し、酸化物表面までのマグネシウムイオンの移動経路を十分に確保するアプローチも重要である。
今回の研究では、東北大の小林講師が得意とするナノ粒子化技術と、慶大の今井教授が得意とする多孔質化技術を融合させ、MgMn2O4スピネルのナノ粒子と多孔質を両立させた正極材料の開発が行われた。その結果、粒子サイズ5nm以下の極小ナノ粒子を合成することが可能な「アルコール還元法」と、多孔質粒子合成が可能な「凍結乾燥法」を組み合わせた技術が開発され、粒子サイズ2.5nm以下、比表面積500m2/g以上の超多孔質極小ナノスピネルの合成に成功した。
研究チームによると、これまでの研究で開発されたスピネル材料(スピネル型の結晶構造を持つ材料)の多くは、粒子サイズ10nm程度または比表面積100m2/g程度であり、今回開発された超多孔質極小ナノスピネルが非常に特異的な材料であることがわかるという。
そして、超多孔質極小ナノスピネルは表面が水と強く結合していたが、低温で熱処理し、酸化物表面を活性化させることによって、理論容量となる270mAh/gの放電が室温下で進行することが見出された。
今回開発された技術は、高エネルギーマグネシウム二次電池の室温動作を可能とするものであり、実用化に向けて大きな研究開発の進展が期待されるとする。材料としても、資源豊富なマグネシウムやマンガンから構成されるため、マグネシウム二次電池のレアメタルフリー化も可能となる。
また、超多孔質極小ナノ粒子は次世代二次電池正極材料だけでなく、触媒材料や吸着材料などへの応用も期待でき、研究進展による低炭素化社会・地球温暖化対策への貢献が期待されるとした。