集積回路の作製に際し、まず酸化物半導体の形成とTFTのパターニングが行われた。酸化物半導体には酸化インジウム-酸化亜鉛(IZO)が採用され、前駆体溶液が塗られた後、大気下での焼結およびフォトリソグラフィによりn型TFTとされた。
続いて、IZOの封止層、兼有機半導体の下地層となる絶縁層の形成の後、単結晶薄膜「C9-DNBDT-NW」の積層がなされた。C9-DNBDT-NWは、いったん超親水性処理ガラス上に塗ることで単結晶薄膜とし、水を駆動力とした温和な転写手法を利用することで、IZO TFTの特性に影響を与えることなく積層することが可能だという。また同様に、フォトリソグラフィを用いてC9-DNBDT-NW TFTを形成することで、目的の有機無機ハイブリッド相補型の発振回路(リングオシレータ)が作製された。
研究チームによると今回の研究では、フォトリソグラフィによりミクロンオーダーの解像度でTFTパターニングを行ったことにより、5段相補型リングオシレータを大気下において77kHzの周波数で動作させることに成功したとする。一般にこの動作速度は駆動電圧に依存するため、駆動電圧を考慮すると、このC9-DNBDT-NW/IZO相補型回路は、塗れる半導体による最高クラスの高速動作を示すことが確認された。さらに、今回の素子はフレキシブルなプラスチック基板上にも作製することが可能であるため、多彩な応用展開が期待されるとした。
研究チームは今後、各半導体の成膜やTFTのパターニングなどの技術改善により、高解像度化や高集積化を図ることで、さらなる高速化や実用性を見込んでいるという。またこれに伴い、塗布型半導体デバイスの社会実装への発展が期待できるとした。