東京大学(東大)は1月27日、溶液を塗ることで形成可能なp型有機半導体と、酸化物のn型無機半導体とをダメージ無く集積化することで、超高速動作する有機無機ハイブリッド相補型発振回路を開発したことを発表した。
同成果は、東大大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻の韋瀟竹大学院生(研究当時)、同・熊谷翔平特任助教、同・渡邉峻一郎准教授、同・竹谷純一教授(マテリアルイノベーション研究センター特任教授 兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、「Communications Materials」に掲載された。
有機半導体は、溶液を塗ることで形成可能な半導体の代表的存在だ。そのうちp型有機半導体では、電荷移動度が10cm2V-1s-1の単結晶ウェハの塗装技術が開発されるなど、高速動作と集積化により高性能化が進んでいる。その一方で、同等技術での組み合わせが可能で、なおかつ同等の性能を有するn型の有機半導体の開発が進んでおらず、そのギャップを埋めることが強く求められている。
なお、塗れる半導体は今でこそ有機半導体のイメージが強いが、酸化インジウムといった無機半導体(酸化物半導体)も長く研究されている。一般に、酸化物半導体はn型半導体として機能し、10cm2V-1s-1前後の電荷移動度を示すため、最先端のp型有機半導体と性能の面で相補的であることがわかっていた。
しかし、塗れる酸化物半導体は課題も少なくない。その1つに、一度形成した後も溶媒やその蒸気、熱などの環境因子によって、その特性が大きく変化してしまう可能性がある。そのため、塗れるp型有機半導体とn型酸化物半導体によるハイブリッド相補型集積回路の研究開発は十分に進んでいなかったという。そこで研究チームは今回、塗れる有機半導体を、環境因子によるダメージ無く酸化物半導体と集積することで、超高速動作が可能な有機無機ハイブリッド相補型発振回路の開発を目指したとする。