近畿大学(近大)は1月20日、安価で環境負荷が小さい化合物を用いて簡便な手法で合成した3次元構造のナノ材料が、光を熱に効率的に変換し、またその熱を用いて触媒として高活性に機能することを明らかにしたと発表した。
同成果は、近大 理工学部 応用化学科の多田弘明教授、同・副島哲朗准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemical Communications」に掲載された。
ナノ材料の応用例の1つに、照射される光を熱に変換して触媒表面を局所的に加熱することで、触媒反応を促進させる「フォトサーマル触媒」と呼ばれるものがある。同触媒の実現手段として、近年登場したのが、ナノサイズの剣山のような構造である「ナノワイヤーアレイ」(NWA)を用いる手法で、3次元構造をしていることから、内部で光が効果的に吸収され、熱を閉じ込めることによって、効率的な光熱変換特性を示すことが期待されている。
しかし、NWAの合成には高価な機器が必要で、手順も複雑であるなどの理由から、触媒反応の分野において実現には至っていないという。また、現状でフォトサーマル触媒で利用できるのは可視光のみで、太陽光の半分を占める近赤外光を利用できないことも課題とされており、より効率良く光熱変換を実現するために、近赤外光への対応が求められていた。
そこで研究チームが着目したのが、「マンガン酸化物」だという。同物質は、天然に豊富に存在することから安価であり、なおかつ環境負荷が小さく、その上で多様な結晶構造や酸化状態に由来する特異な化学的・物理的特性を示すことを特徴とする。
しかし同酸化物を用いたとしても、結局のところNWAの合成には高価で特殊な器具や煩雑なプロセスが必要であるため、同酸化物を用いたNWAの研究はあまり進んでいなかったという。そこで研究チームは今回、マンガン酸化物の一種である水酸化酸化マンガン「γ-MnOOH」のNWA合成について、簡便かつ安価で消費エネルギーの少ない手法を検討することにしたとする。