試行錯誤の結果、従来は790~1230℃ほどだった焼結温度を、750℃まで低温化することに成功したという。

また、この低温下の実現には、2つの液相が重要な役割を果たすことも確認されたとする。具体的には、ドープしたCa2+が焼結助剤「Li3BO3」を低融点化させることで生成する「Li4Ca(BO3)2液相」と、LLZ粒子間に働く圧縮応力で選択的に生成する「Li-Ca-Bi-O液相」の2つの液相で、ドープ量を調整してこれら2つの液相量を最適化することで、相対密度89%を実現できたという。

また、電解質のイオン伝導度は、室温で3.0×10-4S/cmと測定され、実用レベルといわれる10-4S/cmを超える特性を有していることが確認されたほか、電極材料「LiCoO2」と混合して焼結した場合でも、意図しない反応を起こさないことが確認されたとする。

さらに、これらの材料を使って作製された全固体電池は、40サイクルに渡って充放電可能なことも確認され、既報のLLZを用いた酸化物全固体電池より優れた容量維持率である92.8%を示したとするほか、特殊な生産設備を用いずに汎用的なセラミックプロセスを用いて実現したことから、今回の固体電解質を用いれば全固体電池を低コストで製造できることが期待されるとする。

  • 作製された全固体電池のイメージ図と充放電サイクル特性および正極層の拡大図

    作製された全固体電池のイメージ図と充放電サイクル特性および正極層の拡大図。750℃の焼結においても、緻密な正極層が構成できていることが確認できる。40サイクル充放電が可能であり、サイクル後も初期に対し92.8%の容量が維持されている (出所:九大プレスリリースPDF)

なお、研究チームは今後、焼結温度を維持した状態で、LLZが持っているポテンシャル(≧10-3S/cm)の実現と、高容量な電極材料とを組み合わせた電池製造を実現することで、より高容量な全固体電池の実現を目指すとしている。